第24章 町行かば ※R-15
「まぁ、単に俺が君と口付けたい
だけではあるが。だが、良かったのか?
仕立て屋に用でもあったのか?」
「ええ。少し思っていた事があったので」
そんな話をしている内に
東京駅からほど近い大通りに
面する仕立て屋についた
馬車から降りて
そのまま仕立て屋のドアをくぐった
「ああ、これはこれは。煉獄様。
お待ちしておりました」
「すまないな。主人。
頼んでいた件についてなのだが……」
「あ、すいません。
その前に、お願いしたい事がありまして」
杏寿郎が本題を切り出す前に
あげはがそれに割って入って来て
あげはにしては
珍しい行動に少々面食らってしまったが
ドレスの打ち合わせや
採寸をするよりも
優先させたい用事とは……?
杏寿郎が不審に思っていると
あげはが店の主人にある事を
依頼すると主人は快く頷いた
「では、その様に、ご準備を致します」
「すいません、ありがとうございます。
突然、ご無理を言いまして」
「用事は済んだのか?」
「ええ」
店の奥から コーヒーと
デザインの書かれたスケッチブックを
持った女性が店の隅に置かれた
ソファーへと二人を誘導し
ガラスのテーブルにコーヒーを置いた
「煉獄様から、お聞きしておりました
イメージに合わせて幾つか、原案を
デザイン致しましたが……。ご本人様を
目の前にしては…、霞んでしまいそうです」
テーブルの上に並べられた
ドレスのデザインの中から
一枚のデザインがあげはの目に留まった
あげはの視線が
それに注がれているのに気が付いたのか
杏寿郎が声を掛けて来た
「君は、これが気になるのか?
君は上背があるし、足が長くてスタイルが
良いから、こっちもいいと思うがな」
そう言いつつも杏寿郎が
一枚のデザインに目を注いでいて