第4章 ちょっとだけ 分かったこと
そう あげはに尋ねられ ハッとした
俺は彼女に俺の事をどのように感じたのか
と尋ねたのだが
彼女の目には俺が 辛そうに しんどそうに
見えるのだろうか?
「君の目には、俺がしんどそうに
見えるのか?」
「いいえ、見えませんけど。
見えないから、聞いたんですけど?」
見えない そうだろうな 見えてもらっては困る
俺自身が
自分がそんな風にならないと
思うようにしているから
自分は強いんだと自分に言い聞かせて
感じないようにしているから
なんでもない事なんだと
気にも留めないようにして来た事
一瞬 怖いと思ってしまった 彼女の言葉が
なんとも罪作りな事を聞いてくれるものだ…
仮に俺が“しんどくて堪らないから助けてくれ“
とでも言ったら
優しい彼女の事だ
どうにかしようとしてくれるのだろう
そんな風に甘やかされて立ち止まる事を
覚えてしまったら…
俺の信念を揺らがす事になる
「君の優しさは、美徳だと言えるが…、
その優しさが無条件で
誰しもに与えられるのは相当危うい」
「え?」
「君がそんなつもりで言ってる訳ではないのは
わかるが、言われた方は正直耐えかねん。
君の優しさは“毒”みたいだな…」
惜しげもなく誰も彼もに優しくして
そんな君には何か 拠り所はあるのだろうか?
「そう言う君は、しんどくは…ないのか?」
「うーん、どうでしょう?
あまり感じることはないですけども…」
あっけらかんとした顔であげはが答えた
自分の事なのに
妙によそよそしくすら感じられる
自分の事は
あまり大事にできない方のタイプなのか?
それとも
俺と同じような事を自分に強いて来たのか?
どちらにせよ
他人ばかりに構いすぎるきらいがあるのは確かだ
不意に宇髄が言っていた言葉を思い出した
ー「アイツが、自分を大事にしねぇから。
俺が、大事にしてやろーって訳?わかる?」ー
宇髄と話をした時には理解出来なかったが
今の俺には理解できる
そして 不死川が彼女に“継子ならないか“と
持ち掛けたのもきっと これと同じ理由だろう…