第23章 いつかと昨日の口約束
なんだ?また別の不知火なのか?
何故 そんなに遠いんだ
そこは間合いの外…のはずだが?
彼女は俺から少し遠い
俺の間合いの外に居て
俺の間合いの外と言う事は
それは同時に
彼女の間合いからも外と言う事で
ヒュンっと一閃の軌道が見えた
考え事をしていて 失念していたな
さっきの甘露寺の技の時の
鏡を小さくして鞭のようにするあの技か!
「炎の呼吸 弐の型 昇り炎天」
あげはの剣撃を昇り炎天で受け止める
彼女の剣を受けた腕に痺れが走った
あの距離からこれだけの
威力の剣撃が放てるのか
それ 即ち
彼女の間合いが広がった……という事か
と思っていると
ふっとその木刀に掛かっていた
剣撃の圧が急に消えて
「杏寿郎!受けてっ!」
声が聞こえた それも降ってくる様に
遥か上空からだ
いつの間に上に…?
それに一瞬で あの高さまで?
昨日は室内だから ああだったが
彼女は本来は高さを使った
戦い方を得意とするのか?
スゥウウウウッー
フゥウーーーウウッ
あれは水の呼吸と
鏡の呼吸か…
「鏡水の呼吸 鏡連水車!」
冨岡の使う水車なら
手合わせで受け止めた事があるが
だが あれはどうだ?
本当に同じ型なのか?
あの長い しなる鞭のような
剣の状態であれを使えば
あそこまで大きな
攻撃範囲のある
水で出来た回転ノコギリの様になるのか!
で これを あげはは
俺に受けろと言うのか……
確かに俺でなければ 無理な話か…
並みの剣士では 初見の技だし
受け切れないだろうが…
あげはに俺の実力を
高く買われているのは
誠にありがたい事ではあるが
にしても…だ
即興でこんな高威力の型を
編み出されたのでは…
彼女が天才だと認めざるを得まい
「炎の呼吸 伍の型 炎虎っ!」
水車の様に回転しながらこちらへ迫ってくる
あげはを炎の虎で受け止める
と そのままあげはが
ふんわりと重さのない
重力を無視したような
軽い羽のような所作で着地すると
片膝を付いた