第23章 いつかと昨日の口約束
「君は今しがた、俺の屋敷の庭を抉ったのを
忘れたのか……?あれを受けたり、
ましてや捌いたりでもすれば。
うちの庭が、滅茶苦茶になりそうだが?」
「確かに、あれの比では済みませんが……」
あげはが先程 自分の剣撃で
抉った地面を一瞥した
しばらく 打ち合いをして
身体が整った頃に
あげはが木刀を降ろして
「だったら、霹靂不知火 双しますか?」
「ああ、頼む。何か、掴めそうだからな!」
「いや、待ってくれ!
そうじゃない。そうではなくて…」
杏寿郎の言葉に腰を落として
構えようとしていたあげはが
その構えを解いて元に戻ると
「雷の呼吸と、
合わせずに…それを出来るか?」
「と、言うと、霹靂不知火双ではなくて、
不知火双と言う事ですか?」
あげはの言葉にそうだと
杏寿郎が頷く
複合して使うのではなくて
二段呼吸をしながら
型をアレンジするつもりで
使えば それも可能かも知れない
ザリッ……
あげはが
両足を少し開いて
片足を半歩だけ下げる
聞こえた
彼女が地面を踏み込む音
やはりそうか
雷の呼吸と合わせなければ
速度が各段に違う…な
「炎の呼吸 壱の型 不知火 双っ!!」
こちらへ向かって来る彼女の
姿を目でもちゃんと捉えられる
杏寿郎が横薙ぎに放たれる
一段目の不知火を自分の木刀で
受け止める
成程 剣撃の重さは…こっちのが重いか
あげはがその不知火の一閃の
動きのままでその場で回転すると
二段目の不知火を放って来る
回転と共に来る 二段目……
こちらの方が 一段目よりも
更に…回転の分で重い…な
あげはが着地をして
じっと自分の木刀を握った手を
見つめていた
「どうかしたか?あげは……」
「杏寿郎、私に思う所があるのですが……。
これに更に、回転を重ねれば
3連撃でも4連撃でも可能かと」
「だが、回転を重ねれば、その分
技を出し終わった後の隙が大きくなる
確かに、2連目よりも、3連目、4連目と
威力があがるのは確かだろうが……」