第23章 いつかと昨日の口約束
「ハァ、…鏡っ、鏡を……分けていて……」
鏡を分ける? そうすると
ここまでにも 負担になるのか?
「鏡は……大きくしても、一枚だから……、
大きくするのは、ハァ、いいけど…っ」
「そうなのか……、それは理解したが。
で、その行動は、君にとって、必要なのか?」
「………っ、優先させるべきにぐらいには」
そう言ってあげはが
息を大きく吸い込んで呼吸を整える
あげはの呼吸が整ったのを
確認すると杏寿郎が声を掛けた
「で、君は型を見せて欲しいのか?
それとも、君の型を俺が見ればいいのか?」
稽古を付けて欲しいと
昨日確かに彼女から依頼されたが
「はい、以前にあの列車で杏寿郎に
炎の呼吸の型を見せては貰ってたんだけども。
もう一度、確認をして置きたい型があって……」
確認して置きたい型と言うと
彼女は 不知火も昇り炎天も使えるし
どの型の事なのだろうかと
杏寿郎が思案していると
「もう一度、鏡眼を通して
…盛炎のうねりを見せて貰いたくて」
盛炎のうねり…を?
「ならば、一つ条件があるが」
条件があると
杏寿郎に言われて
あげはが目をきょとんとさせていて
「条件……と言いますと?」
「君が、昨日使っていた、
あの不知火を連続でするあれを、
もう一度見せてくれないか?」
「それは構いませんけども、あれは
雷と炎の複合呼吸ですよ?杏寿郎には…」
「確かに俺には、
炎の呼吸しか使えないが。君のあの、
型には何らかのヒントがあるかも知れん」
「少し、身体を温めますか?」
あげはが尋ねて来たので
木刀を軽くぶつけ合いながら
会話をする
まあ 軽くと言いつつも
受け損ねれば
怪我をするくらいではあるから
昨日の真剣での手合いよりは
数段温い 形ではあるのだが
お互いの木刀がぶつかり合う度に
乾いた音が庭に響いた
「杏寿郎は、試してみたいですか?」
「試す?何をだ」
「私の鏡が、煉獄を
受け止め切れるかどうか……です。ここは、
中庭ですし、屋外ではありますから」