第23章 いつかと昨日の口約束

あげはの作る　料理は
実家で過ごした時も食べたのだから
味は確かだと知っているのだが　
何を謝りたいのだろうか？

「欲張り過ぎてしまいまして、
サツマイモが、一番多いのは多いのですが、
他にも具が沢山……入りすぎてしまいまして」

謝りたいと言われたから
どんな事かと思って聞けば

サツマイモの味噌汁の
具が多くなってしまった事を
あげはは気にしている様だった

「君の心配はそこか？全く、君らしいな」

「ええ？でも、サツマイモの味噌汁、
と言う名の野菜味噌汁ですよ？」

そんなやり取りをしていると
春日が朝食の準備が整ったと
俺達に声を掛けに来て

朝食を取る為に
中庭に面した和室へ向かう


実家で朝食を取った時も
感じたのだが
あげはが作る朝食は品数が多い

ひとつひとつは手の込んだ
物ではないが　小鉢が多いのだ

かと言ってその内容は
質素なものであり贅沢でもない

アジの開き　卵焼き　
ほうれん草のお浸しに
キャベツの酢の物　それから
やたらに野菜が入った味噌汁
それと漬物と高野豆腐の煮物

野菜を多く　それも無理が無く
摂れるようにしてある
タンパク質も多めに摂れるし
健康管理を担う者の観点から
考えられた　食事だな

自分の膳と彼女の膳を見比べて
ある事に気が付いた

「ん？俺の…、気のせいでないのなら」

「どうかしましたか？杏寿郎さん」

「君のほうれん草のお浸しなのだが……」

指摘したい内容に気が付いたのか
あげはが少し慌てた様子で

「すいませんっ、杏寿郎さんも
こっちがお好きでしたか？」

明らかに彼女のほうれん草のお浸しには
茎の部分が多いし　その上赤色のついた
根元も入ってる

それに　こっちが好きとは……？

「こっちが好き？どっちの事だ？」

「ほうれん草の茎の事ですが、
美味しいのでこっちの方が」

しばらく無言で
思わず箸を止めてしまった

彼女の口振りや表情から見ても
俺に遠慮をしてとか主だからとか
そう言う事ではなくて
本当にそっちが好きなだけのようだが