第23章 いつかと昨日の口約束
「それは、さっき言ってたオートなんとかを
買いに行きたいとかか?今日は町まで色々と
買い物に行く約束だったろう?」
そう言いながらも
私の胸の膨らみに
杏寿郎が口付けていて
添えられた手で中央に
向けて左右から寄せられて
彼の顔を挟み込む感じになる
「いえ、それも、そうではあるのですが。
私が言いたいのは
朝食の後に、稽古をですねっ…」
「ああ、そっちか……君次第だが?
早急に済ませるか?あまり時間もないしな」
時間があるなしの問題ではなくて
いや 早急に済ませたから
どうこうって問題でもないような?
「ダメですよ、杏寿郎……今は……」
「それは、残念だ。
だったら、庭でも歩くか?」
私の開いた胸元を杏寿郎が戻すと
こちらに手を伸ばして来たので
その手を取ると杏寿郎に手を引かれて
中庭にエスコートされる
今のは…その 彼の
申し出を私が断らなかったら
私はあのまま廊下で 彼に
抱かれてたのだろうと
私の手を引くその横顔を見ながら
考えていた
中庭には小さな池があって
中に泳いでいる鯉が
人の姿を見てこちらへ集まって来る
「餌でも、やるか?」
「え?いいんですか?」
手を出すように促されて
杏寿郎が植え込みの陰に置いていた
容器から出した鯉の餌を
あげはの手に握らせた
鯉の池に餌を投げ入れると
鯉の口に餌が吸い込まれて行く
朝からこんなゆったりとした
時間を過ごしていいのだろうか
凄く 穏やかな 時間だなぁと
あげははしみじみと感じていた
鬼殺隊を目指すようになってから
こんな穏やかな朝を過ごしたのは
初めてなのかも知れない……
彼を倒せるのか?と言う事に対する
不安が…消えたから か
私の中から……
そんなことを考えていると
ふと 視界に杏寿郎が入って
あげはは餌をやるのは
そこそこにして
隣で同じように鯉に餌をやっていた
杏寿郎をぼんやりと眺めていた