第23章 いつかと昨日の口約束
「わ、私でしょうか?」
「ちょっと失礼しますね」
と言って何をするのかと思ったら
その使用人の男性にあっかんべーを
する時の様に目の下に指を当てて
その瞼を下げると瞼の裏の色を確認する
「日中の眠気…ずっとあったりします?
先ほども、生あくびされてましたし。
杏寿郎さん、こちらの方はしばらく
入院されて治療をされた方がよろしいかと」
「ええ?いえ、少しばかり
眠気があるだけで……
そんな、入院までは…」
「黒い便が、出たりしますか?明らかに顔色が
白いですし、眼瞼も白かったので。
ある程度まで、進行してる貧血で
あるのは確かですから。恐らくですが、
上部の消化管から出血しておりますので
精密な検査と、早期の治療をお薦め致します。
それがなくて、消化管でなくても、
貧血の原因がどこかにありますので。
急激に症状が進行してるのなら、
急性白血病等の造血器疾患の恐れも
ありますから、一度精密検査を」
そこまで言うとあげはが
こちらに身体ごと向き直り
「杏寿郎さん、それでよろしいでしょうか?
こちらの方に、いとまを…出す事に
異論はございませんか?」
「あ、ああ。
それは、俺には異論はないが……」
「そうしましたら、一度大きな病院で
検査入院を結果が出ましたら、こちらまで
ご連絡を頂けますでしょうか?」
「で、あげは。君は俺に朝の挨拶もなしに。
台所で何をしていたんだ?」
あれ?どうしてだろう?
杏寿郎さん 機嫌が悪い感じがする
「おはようございます、杏寿郎さん」
「ああ、おはよう。あげは。
いや、それは今はいいのだが…その」
「……?」
あげはの耳元に杏寿郎が
自分の口を寄せて自分の手で
覆いながら他から聞こえないようにして
小さな声であげはにある事を囁く
「…ーーーーーだが?」
「そ、それは…その…」
「で?ここで何をしていたんだ?」
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用語解説
・上部消化管出血
(じょうぶしょうかかんしゅっけつ)
出血を起こしている部位によって
胃から上なら黒く、下であるなら
あるほど、鮮血になります。
ここでは、食道や胃からの出血を指す。