第3章 琥珀糖の
そう言われて見ると…なるほど
カナエとあげはは
顔立ちが似ている 顔の作りもそうだが
穏やかでふんわりとした柔らかい空気を
纏っている辺りも似ているな…
ん?待て カナエは確か 不死川や冨岡と
同じ年齢だったはず
彼女は幼い顔立ちをしているので
見た目こそ 18や19に見えるが…
いや 俺が入隊した5年前に
すでに柱だったんだ
思わず あげはに歳を訊ねたくなった
妙齢の女性に年齢を尋ねるのも…
あまり良くは無いだろうな
「君なら、知っていると思って尋ねるのだが。
先代の炎柱について教えては
もらえないだろうか?」
先代の炎柱 つまりは彼の父親の事だ
回りくどい聞き方をするんだな…
なんでなんだろ?
それに自分の父親なのだから
私にわざわざ聞かずとも
自分の方が知ってそうなのに
要するに 彼の知らない
柱として仕事をしていた
父親のことが聞きたいんだろうと
解釈して
私は彼の父と
一緒に任務に赴いた時の話をした
彼女の話の中の父上は
立派に炎柱としての務めに
邁進していた様だった
俺が鬼殺隊に入る頃には
父上は任務に酒を持ち込む様になっていて
任務も“気が乗らない”と
他の柱に振る事も多くなっていた
父上の行くべき任務を
当時柱であった彼女も
自分の務めをしつつも
こなしてくれていたのだろう
在りし日の母上が 父上の様な立派な
炎柱になりなさいと仰っていた
その父上の姿を 俺がこの目で見ることは…
これから先も…望まれないのだろうか?
父上は昔からああではなかった
情熱的で熱心だった
なのに…なぜ?
「…君、煉獄君。煉獄君ってば!!」
何度かあげはに名前を呼ばれて
現実に引き戻される
「すまない、考え込んでしまっていた様だ」
「この駅が終点みたいですよ、
車両の点検とか清掃とか、燃料の補給とかで、
一度降りないといけないんですって」
荷物を持ってホームに降り立ち
時刻表で次の発車時刻を確認する
自分達が乗ってきたこの列車は
この先の別の区間への運行になるらしく
この駅から東京へ向かう次の無限列車までは
3時間以上時間がある様だった