第20章 炎柱 と 鏡柱
「いえ、そう言う意味ではなくて、
いや、でも普通のお酒よりはキツイとは
思いますよ?薬膳酒ですから。
沢山飲んだりするものでも、ありませんし」
あげはの様子がおかしいと
杏寿郎が気付いて
「君は何を、そんなに慌てている?
これを俺に、飲まれるのが、
そんなにダメなのか?」
飲むのがダメでも
せめて見てもいいだろうと
あげはの手にあった
その桐の箱を取り上げると
その中にある瓶を取り出した
「あっ、ちょ、杏寿郎。
あんまり中は、見ない方が……」
黄色味を帯びた
薬膳酒らしい色味と
瓶の底にわやわやと見える
その漬かっている物に
杏寿郎が思わず
まじまじとそれに
顔に近づけて目を凝らす
これは……
俺の記憶が確かなら
この酒に漬かっているのは
「これは、……タツノオトシゴか?
蛇の入った酒なら見た事があるが……」
「へっ、蛇ですかっ?それは、
マムシですか?シマヘビですか?
その、それとも…ハブですか…?」
「いや、その酒に入ってた蛇が
何なのかは、俺も知りはしないが。
君は蛇が好きなのか?」
俺の質問にあげはが
首を左右に振って否定すると
何故に あげはは
居心地が悪そうにして
俺から視線を逸らせて
泳がせているのかとか
聞きたい事は沢山あるが……
「で、正直に話してくれるか?
君は、俺にどうしてこれを
飲ませたくないのか?」
「いや、杏寿郎には必要ないからですよ!
まさか、しのぶちゃんが、
こんなのくれるとも思ってなかったし?
すぐ使えるやつを」
使える?
今 使えると言ったな?
それもすぐに使えると
使う? 何に使うんだ?
「使える?何に使うんだ?
飲む物じゃないのか?
それに、俺はダメでも、
君は飲むつもりなんだろう?」
どうしよう?
私は 嘘は苦手だ……
きっとついてもバレる自信しかない
「うむ。答えられないと…、だったら
質問を変えるが、薬膳酒なんだろう?
何らかの効能があるんじゃないのか?これに。」
と一旦 言葉を区切ると
「そして、君はこれが何に
効果があるか知っていて、
知っているからこそ、
俺には飲ませたくないと…。
そう、考えてるんだろう?違うか?」