第20章 炎柱 と 鏡柱
そう言って 一旦言葉を区切ると
「私だって、沢山救われてる。その貴方の
強引過ぎるぐらいな、性格とか。どんな事も
些末な事にしてしまえる、考え方とか……。
それに救われてる、ずっと、……救われてた」
「あげは、……なら。言ってくれるか?
そんな風に、言われるのも喜ばしい限りだが。
もっと、別の言葉を俺にくれないか?君の口から」
「杏寿郎、……愛してる」
私が そう彼に伝えたら
彼は それはそれは嬉しそうに
笑ってくれて
それから ぎゅうっと
力一杯 痛いくらいに抱きしめてくれて
そっと 口付けてくれて
頬と頬を重ねて
それから
額と額を合わせて
お互いの視線を合わせる
「あげは、…俺もだ。
君を愛している、あげは」
「杏寿郎、ありがとう。嬉しい……」
「心の底からな!
何度でも言いたい!俺は、…むぐっ」
更に愛してると言おうとした口を
あげはに塞がれて
「もう、いいですって、何度も言わなくてもっ」
夕食の時間になって
初めてこの屋敷の使用人さん達と
顔を合わせたんだけども…
気まずい…非常に
ご飯の味 分からないんだけど
杏寿郎はいつも通りの
食べっぷりで 羨ましい限りだけど
「あげは様…、蝶屋敷の胡蝶しのぶ様から
こちらが届いておりますが。
何でも着任祝いだとか……だそうです」
そう言って 桐の箱に入った
お酒と思しきものを渡されて
あげはがそれを受け取る
「すいません。ありがとうございます。
お酒……、しのぶちゃんから…」
「胡蝶からの贈り物か、だったら飲むか?」
使用人に新しいグラスを
持って来るように
杏寿郎が頼むと
あげはがその手にある
桐の箱を開くのを
見たい様だった
カパッと蓋をあげはが開くと
そのままその蓋を閉じる
「あ、すいません。グラス結構です」
「何故だ?飲まないのか?折角の……」
あげはが手を俺の方へ向けて
俺を制止するようにして
「兎に角、これは……ダメです。これは
杏寿郎は、飲んだら…ダメなやつですから」
「は、どういう事だ……?俺は、20だぞ?
飲んではいけない年齢では、ないぞ?
それに今だって……」
ふたりで 今も
晩酌していると言うのに
何故 飲めないと言うのか?