第20章 炎柱 と 鏡柱
「君の口から、その言葉が出るまでは
今夜はそうするつもりだが?ダメだろうか?
こんな俺は、…君は嫌いだろうか?」
彼のその言葉は
つまりは 私の口から
もう これ以上出来ないだとか
これ以上 したら死んじゃうとか
これ以上は許して とか
そんな感じの言葉が聞けるまで
容赦はしないと言う意味で
そして 更に何が
恐ろしいかと言うと
それを容認して欲しいと
許可を得ようとしてる所とかね
「今夜”は”?ですか…?
今夜”も”の間違いでは?」
こんな事だったら
貰っといたら良かった
タツノオトシゴ
あれだったら 男性だけじゃなくて
女性にも使えたから
そんな事を後悔した
あげはであった
夕飯の時刻までは
少々余裕があったから
あげはが包まれたままの荷物を
整理したいと言ったので
あげはが荷物を整理するのを
横目に見ながら俺は読書をしていた
手伝いを申し出たが
自分でするからと断られたからだ
「やはり、明日は、君の荷物を整理する
家具も購入した方が良さそうだな」
「そうですねぇ、でもあまり大きな物だと
お部屋が狭くなってしまいますよ?それに、
家具なら。明後日位には蝶屋敷に残して来た
私の家具が届くので。…ベットは要らないと
処分を依頼して来ましたが、
机は…必要ですし。でも……」
蝶屋敷は板の間だったから
洋式の家具だけど
ここは純和風のお屋敷だからなぁ
あの机あっても似合わないか
「この家に、あの机やタンスを置くのか?」
「そうですよねぇ、あれは私の私物なので。
あそこにも置いてはおけませんし」
「ふむ。確かに板の間でないと
あの家具はおけんな……、仕方ない
一間、板間に張り替えてもいいが?
君にとって大事な家具なのだろう?」
「いいんですか?
板の間に変えて貰って……」
「そんな、明らかに嬉しそうな
顔しているのを見てそれは、出来ないとは、
俺も言ったりはしないが?」
「ありがとう、杏寿郎。大好きっ」
ギュウっとあげはの方から
抱き付かれてしまって
スリスリと体を擦り寄せられてしまう
そっとその身体に腕を回して抱きしめる
「君が喜んでくれると、俺も嬉しい…がな」