第20章 炎柱 と 鏡柱
だが 違う
あげはが鏡で防いで
返すあの技じゃない
今 俺に迫るこの炎虎は
間違いなく彼女自身が放ったもの
彼女は炎虎まで 使えたのか?
だったら あの鏡の呼吸の
型は何のために……?
だとしたら あの炎虎は
鏡の呼吸を使って放ったのか
あの型は 初見だ
いや それを返せるのは初見だ
彼女はまだ…他にも
使った事のない鏡の呼吸の
型を持っているのか…
ガキィンッ
お互いの刀をぶつけ合って
それを受け止めると
そのまま剣の応酬を繰り返す
キィン ガキッ ギインッ…
お互いの刀がぶつかる度に
火花が飛び散る
こんな時に
こんな事を考えるのも
おかしいが……
彼女が柱を辞して
腑抜けて牙が抜けた獣に
成り下がった訳ではないのは
こうして剣を突き合わせていれば
分かる事……
それに どうだ?あげは
君は 感じているか?
俺は 今……
君と …剣を合わせて
正直 驚いてもいるし
楽しいとさえ …感じている
剣を交わす 一瞬の合間に
彼女の顔が見えて
その口の端が上がっていたのが見えた
そう感じていたのは
君もだったか…
「楽しいと感じていたのは、俺だけでは
なかったか。やはり。俺と君とは、
相性も抜群のようだが、なっ!
炎の呼吸 弐の型 昇り炎天っ」
ゴォオオッ
弧を描きながら杏寿郎の剣が
あげはを捉えようとする
「楽しい?…確かに楽しいとは、
感じては居ましたが…水と炎ですよ?
水の呼吸 参の型 流流舞い」
ザバァあげはが水の流れを纏いながら
流れる様な動きの所作で
俺の昇り炎天を捌いて
更に俺の追撃もそのまま受け流していく
あの時に あの上弦の鬼に
していた攻撃を捌く 剣捌き…
素晴らしいな 見事だ……
闘いの中で 使う型の選択も
その応用も 素晴らしいな…
「だが。そう、
防戦一方では俺は倒せないぞ?」
杏寿郎が そう言って
あげはを挑発するようにして
二ッと口の端を上げた