第20章 炎柱 と 鏡柱
ダンッ 杏寿郎が畳を蹴って踏み込む
「炎の呼吸 壱の型 不知火っ!」
「水雷の呼吸 霹靂波紋突き!」
スッと彼女の姿が
眼前から消える
目にも 映らないか
流石 雷の呼吸だな…
踏み込みの音も 聞こえないのか…
杏寿郎の剣が空を切って
不知火を放って崩れた体勢を素早く
整えると斜め右の前方から気配がする
残像を伴って鋭い突きが迫って来る
そこかっ!!
「炎の呼吸 肆の型 盛炎のうねり」
杏寿郎の前方に炎の壁が
現れて あげはの突きを止める
そのまま あげはが
体勢を整える為に
後方へ高く飛んで回避すると
刀を杏寿郎が構え直して
上から来るであろう攻撃を
迎え撃つべくして
「炎の呼吸 伍の型 炎虎っ!」
杏寿郎の放った斬撃が
炎の虎へと姿を変えて
あげはに襲い掛かる
空中でひらりと あげはが身をひるがえす
まるで重さのないような
そんな風に
彼女の動きが ゆったりとして見える
そうだ あの時も
あの初めて出会ったあの夜も
彼女はふわりと
舞い降りて来たのだ
天女の様に……
俺自身も あの時の
あの夜に出会った 彼女と
今 自分の目の前にいる
彼女が 重なり切らない部分があった
ああ だが やはり
彼女なのだ……
あの夜に 俺が出会ったのは
紛れもなく あげはだったのだ
「炎の呼吸 伍の型 炎虎っ」
先ほどの炎虎はかわされてしまったので
更にもう一度 同じ型を繰り出した
杏寿郎の放った斬撃が
炎の虎へと姿を変えて行く
あげはがこちらを見ているのが見えて
「鏡の呼吸 参の型 鏡眼」
その左目が 銀色に輝いて見えた
あれは……あの列車で
俺の型を見せて欲しいと言った時に
一瞬だけ見えた…
あれは やはり気のせいではなかったのかっ
いや 感心してる場合じゃない
微かに聞こえる
彼女の呼吸の音が
フゥーーーーゥウ
これは鏡の呼吸の型だ
「鏡の呼吸 肆の型っ 鏡眼複写!」
聞いた事のない型だ
あの構え
まさか
あれは 炎虎か!