第20章 炎柱 と 鏡柱
グッと杏寿郎に腕を掴まれて
自分の方を向かされると
「何故、君がそれに遠慮する?
それは、他の誰の羽織でもない。君の羽織だ。
お館様もそう仰っておられたのに。
どうして、君自身が、自分を認めない?」
じっとその瞳が
私の瞳を真っすぐに捉えていて
私が彼の言葉に返せないでいると
「ここまで言っても、まだ、分からないか?
ならば、もっと…別の言い方が必要か?
何故、君自身が、そうである君を
否定する必要があるんだ。
言えるだろう?あげは。君は、何だ?」
私が 私に
柱足るものが
今の 私にはないのだと
柱の名を語るのに
今の 自分は相応しくないと
あの羽織を着るのに
相応しくないと そう思ってるのを
杏寿郎には全て
見透かされていて
私が 義勇にそう 問いただした様に
今 正に自分が……そう
目の前の 炎柱に尋ねられていて
自分が 何者なのかと……
問われていて
「俺は、君の実力が柱としても十分通じるのは
あの列車での戦いで知っているつもりだ。
それに、精神力、胆力も、柱の資質
……全て兼ね備えている」
グイっと掴まれていた腕を
強く引っ張られて
すぐ目の前に杏寿郎の目があって
顔と顔を突き合わせる形になる
「答えろ!あげは。君は何故、…自分が柱に
相応しくないと思うのか、答えるんだ!」
「……そんなのっ、そんなのはっ。
私が弱いからに決まってる!私が
迷って、悩んでしてる間にっ……」
「そうして居る間に、三上透真が、
人を殺して食らったからか!だったら何だ?
ならば、鬼が、人を殺して食らうのは、
全部…、君の所為だと言うのか?
違うだろう!」
言葉を返せないあげはに
更に杏寿郎が畳みかけるかの
様にして続けた
「それに、罪悪感を感じてるからこそ、彼を
救いたいと君は思ってるんじゃないのか?
彼に、彼等に、これ以上罪を
重ねさせるつもりか?君は!」