第3章 琥珀糖の
「いかにも、彼女の探し人は俺だが。
彼女に何か、用でもあるのか?」
いつもよりも低く杏寿郎が言うと
3人の男たちはすごすごと
去って行ってしまった
「大丈夫か?」
自分の背後に向けて問いかける
「はい、すいません。
お手を煩わせてしまって、申し訳ないです」
視線がぶつかって
見つめ合ったまま しばし
まじまじと見つめられて…いる?
いるよね?私…
「ん?人違いだったか?」
「私ですよ!あげはです!」
ムッと怪訝そうに眉を顰めると
いつもの彼女だった
それにしても
いつもと違う服装のせいか 髪型のせいか
いつもよりも幼く感じてしまう
「それにしても、随分と大荷物だな」
「これは、救急セットですよ。
まぁ使わないに越したことないですけど」
汽車がホームへ入って来て
「あ、丁度到着したみたいですね」
「うむ、乗り込むとしよう」
汽車のドアが開いて 中に乗り込むと
空いていたボックス席に2人で座った
どうしよう 物凄く見られてるな
なるべくそっちを見ない様にしてるけど
私…今 めっちゃ見られてるんだけど…
やっぱり この格好のせいかな?
…おかしいんじゃ…
意を決した様にしてあげはが尋ねた
「やっぱり、おかしいですよね?」
「おかしい?何がだ?何かおかしいのか?」
何がおかしいのか分からないと
言いたげに杏寿郎が返した
「そのね、私だってね、
…わかってたんですよ?
若作りしすぎなんじゃないかって、
でも…しのぶちゃんがね
これでって…言ったので。…仕方なく…」
杏寿郎の視線を感じてか
あげはは苦し紛れに言った
カタン カタン ゴトンゴトン
車窓の外にはいつの間にか 都会を離れ
田園風景がどこまでも広がっていた
「胡蝶の見立てだったのか!いいな。
君に良く似合っている!!」
「え?そうですか?おかしくないですか?」
「おかしくはない!」
大きな声で言い切られてしまった
「君はいつも可愛らしいが、
今日は一段と可愛らしいな!」
「へ?」
「す、すまない!…失言…だったか。
忘れてくれ」
「褒めても、何も出ませんよ…
と言いたい所ですが」