第18章 炎屋敷へ ※R-15
あの時 右耳から聞こえていた声を
鵜呑みにして信じきれない
声 その物を 幻聴だと思っていた
部分もあって
私にとっての都合の良い話を
私の脳が作り出しているのかとも
考えたりもしていたから……
そして 私に色々と教えてくれる方の
右耳からの彼の声も
自分がカナエちゃんに
二重人格かもしれないと
相談したと言っていたし
いや 彼は知ってたのか
それがカナエちゃんの誤診だったと
でも それを私に透真さんが
伝えて来なかったのは きっと……
そして 彼は
自分が抑圧されていて
声を私に届けるのも
もうひとりの自分に
阻まれているとも言っていた
その証拠に
この声が聞こえ始めた頃から
1年 2年と 年月が経過して行くにつれて
聞こえて来た 優しい方の彼の声は
徐々に 徐々にと……
聞こえにくくなって来て
パラパラと最初から日記帳の
ページを捲って時間経過に合わせて
追って行けば
最初の頃は左にも右ににも
同じ様にしてページに言葉が
埋められているが
それの比率が
明らかに 違って来てるのが
目で見ても分かる……
けど 不思議な事に
私に酷い言葉を浴びせる方の
彼の声も……少しずつ減って来ていたのは
私がそれに慣れたのもあるかもしれないが
今思えば……
彼がそれを
阻んでくれていたのかも知れないと思うと
彼はずっと 透真さんはずっと
私の元を去ってしまった後も
私の事を 守ってくれてたんだと
今となっては理解できる
「透真さん……」
パラパラとページを捲って
お目当てのページを探す
でも それも……
都合のいい幻聴だと思っていた私には
知る由も無い事だったのだから
「ああ、あった。ここだ…」
お目当てのページを見つけて
あげはがページを送るその手を止めた
記憶にはぼんやりと残っていたが
彼が私に残した言葉の中には
鏡の呼吸の応用の方法もあった
蜜璃ちゃんの家で
透真さんの事を思い出した時に
この日記の事を思い出したのだ
それを言葉として聞いた時には
何の事だか全く私には
理解が出来なかったけど
でも 今の私になら解る
彼が自分の声を私に書き残せと言った理由も
全て…