第17章 理由 後編
よしよしとあげはが
カナヲの頭を撫でる
「ごめんね、カナヲ。…ありがとう。
姉さんの、我がままを許してくれて。
カナヲは、いい子ね。……大好きよ、カナヲ」
「あげはっ…姉さんっ…私っ」
「あら?まだ、いらしたんですか?もう二度と、
蝶屋敷には戻って来ないで下さいね?
あげは姉さん」
嫌味っぽい口調で
しのぶがそうあげはに声を掛けて来た
「ちょっと、しのぶっ。その言い方は何なの?
仮にも、姉さんに向かって、その言い方は……!
言われなくても戻って来ないしっ!
邪魔だって言いたいのね?もう行くからっ。
行けばいいんでしょ?行けばっ!」
そのしのぶの言い方に
気分を害したかのように
背中を向けると
あげはが馬車へ乗り込もうとする
馬車に乗ろうと足を掛けた時
「あげはさん」
そうしのぶに呼び止められて
あげはが足を止めて振り返る
「しのぶちゃん…?」
「煉獄さんと、お幸せに…。
絶対に…、幸せになって、……っ下さいっ。
貴方だけ、は…」
そう言って
自分の顔を見られたくないのか
あげはから視線を
しのぶが逸らせて顔を背ける
ギュッと拳を軽く握ると
自分の胸元へ添える様にして
それでも俯いたままで
あげはの方に顔を向けないまま
「いってらっしゃい、あげはさん」
「うん。今まで、ありがとうね。しのぶちゃん」
「お礼は、全てが済んでからでいいですよ」
「いってきます」
あげはがピタっと足を止めると
こちらに背を向けたままで
「大好きよ……、しのぶ」
と聞こえるか聞こえないかの声で
独り言の様に呟いた
こちらへ手を振って
小さくなっていく
あげはを乗せた馬車へ向かって
「いってらっしゃい。あげは姉さん」
その馬車が見えなくなるまで
しのぶはずっと見送っていた
「私も……、大好きですよ。貴方が……」
しのぶもそう
誰にも聞こえないくらいの小さな声で
独り言の様にして呟いた
ーーーーーーーーーーーーー
今回は彼の真相のお話でした。
実は彼の真相については
4パターン考えていました。
どれにするか、悩んで、
今の形にしました。