第17章 理由 後編
「別にっ、心配してたとか、
そんなんじゃないからっ。
お礼とか、言わなくていいし?」
「なぁ、善逸……」
「炭治郎、どうかした?」
炭治郎が足を止めて
それから空を仰いだ
太陽が眩しくて
手でそれを遮った指の間からは
青い空が見えた
「人を好きになるって事は、
そんなに……難しい事なのか?」
「えええっ?俺にそれを、聞いちゃうっ?
聞いちゃう感じ?……俺にも分かんないよ、
そんな事っ!それに、煉獄さんの話だけじゃ、
全部が全部って訳じゃないじゃん?」
「ああ?何言ってやがるんだぁ?
んなの、簡単じゃねぇかよ!
ソイツ、ブッ倒しゃーいいんだろうがよ!」
まぁ なんとも
伊之助らしい意見で
やっぱり伊之助は伊之助だなぁと思った
蝶屋敷が遠くに見え始めて
風に乗って運ばれて来た匂いに
炭治郎は覚えがあった
この匂い…
煉獄さんを殴ったって言う
音柱の人の 匂いだ……
聞かなくては 何でそんな事をしたのかと
聞かなくては…聞けるのであればだが
「ん?何で、お前等が
……ここに居やがるんだ?
煉獄の所に……って。
ああ!そうか……今日だったな」
俺達が蝶屋敷に向かっている理由が
この宇髄さんには分かっている様で
納得した様子だった
その顔を見て気が付いたが
宇髄さんが煉獄さんを殴っただけでなくて
宇髄さんも煉獄さんに殴られた…って訳か
宇髄さんの頬もほんの少しだが
まだ腫れているようにあった
「おい!お前、その顔っ、殴られたのかよ?」
相変わらず 言葉を全く
選ばない伊之助が 宇髄に尋ねた
「ああ、そうだと言ったら、
お前らはどうするんだ?
確かに、お前等も想像してるだろうが、
これは煉獄がやった事だ、それも派手にな」
「お二人は、喧嘩…でもされてるんですか?」
「これが……、只の喧嘩だったら、
……どんなに良かっただろうな」
そう言って自嘲的に宇髄がふっと笑った
「お前等は、……どれ位知ってるんだ?
誰から、聞いた?その話を、煉獄か?
それともあげはの方からか?まぁ煉獄にも、
話せないような話を、あげはが…お前らに
する訳ねぇか。それもそうだわな」
「ひとりで言って、
ひとりで解決しちゃってるしっ。
もう、一体、何な訳っ?この人っ!」