第17章 理由 後編
ドンっと背中に衝撃を感じて
何かと思ったら
ギュウウウッと私の背中に
カナヲがすがりついて来ていて
カナヲは何も言わないままで
力一杯に私の身体を抱きしめて来た
「カナヲ……」
心配をアオイちゃんにもカナヲにも
掛けてしまっているのだと気が付いた
「ごめんね、カナヲ。姉さん…こんなんで、
……弱くて…情けなくなる」
そのあげはの言葉にアオイがハッとした
「あげは……様?」
以前……
重症の患者が立て込んでいて
手が回らなくて
私が酷く取り乱した時
混乱して動揺している
私の隣に居たあげは様は……
驚くほどに冷静だった
あの時のあげは様が私に言った言葉
ずっと仕事が忙しくて
どうにもならなくて しんどいって感じた時
取り乱しそうになった時に思い返していた
「以前、私に、あげは様が仰った言葉。
どんな時でも、私達は取り乱してるのを
顔に出してはいけないと、心の中でどれだけ
動揺していても、外には出すなと…」
アオイの言葉は
自分が前にアオイに言った言葉だ
記憶に残っている……
アオイが紡いだ言葉の
続きをあげはが続けた
「見ているから、私達は自分が
思っている以上に見られてるから、
私達の事を見てる相手を、
不安にさせてはいけないと…。
そう自分で言っておいて、
……でも、今は、白衣は着てないから」
どんな時でも 看護者は
冷静でいないといけない
落ち着いていないと
判断を見誤る
私たちが判断を見誤れば
取り乱してしまえば
目の前にある 救える命すらも……
救えなくなってしまうから
どんな時でも 冷静に
きっと 白衣を着ていたら
こんな風には顔には出ていないだろう
「あげは姉さんは、
みんなの姉さんだから…。
頼られるばっかりだけど
…でも、頼っても欲しい……」
カナヲの声が後ろから聞こえて
あげはは心苦しく感じた
彼女には…頼んでないから
カナヲにそれを 頼んでもいいのか?
お願いしていいのか
…正直判断できないでいた
でも カナヲにはもっと
別の事を……頼みたい…と思ってる