第16章 理由 前編
俺よりも更に
葛藤しているだろうあげはが
俺にそう問いかけて来て
どこにそんな力があるのかと
言うくらいの力で
日輪刀を
透真さんの刀を押し付けられて
”義勇……”
脳裏に透真さんが
俺の名を呼ぶ声が聞こえた気がした
ツゥ…っと義勇の目から
涙が一筋零れ落ちるのが見えた
「俺は……」
あげはの手にあった
透真の日輪刀の柄を義勇が握ると
「鬼殺隊、水柱…、冨岡義勇だ」
スッとあげはが
自分の手を
日輪刀から放して降ろした
「義勇。ありがとう。…ごめんね、義勇」
「俺はいい、だが…。いいのか?」
「義勇…、どうして…これがここにあるのか
考えてみてくれる?
義勇ならきっと気が付くと思うから」
そう言ってあげはが笑って見せた
自分の右手にある
透真さんの日輪刀の重み
俺の日輪刀と
そんなに重みは変わらないはずなのに
酷く 重く… 感じた
「義勇」
「何だ?あげは」
「強く…なったね、義勇。
本当に…強くなった。貴方は……」
「俺は、柱じゃない。
透真さんみたいにはなれない…」
「義勇、耳……貸して?」
あげははもう落ち着いたのか
いつも通りの様子でそう言うと
義勇があげはの方へ少し
身体を傾けた
「あのね、……ーーーーー」
あげはの囁いた言葉を聞いて
「そんな事が、可能なのか?」
と信じられないと言いたげに義勇が返した
ニコッとあげはが笑って
「義勇だったら、出来るよ?
だって義勇は、透真さんの継子だからね」
「あげは、戻るのか?」
「うん、蜜璃ちゃんが
夜には戻るって言ってたからね」
「甘露寺が?戻る?どういう事だ……?」
意味が解らないと言いたげに
義勇があげはに問いかけて来て
「ああ。どうして私が、
蜜璃ちゃんの所に居るかと言うとね……」
あげはが腰の日輪刀を鞘ごと抜き取ると
義勇に差し出して
抜いてみるように促した
あげはの言葉に義勇が半信半疑に
その日輪刀を抜くと
「これは……」
「そ、恋の呼吸が使えるようになったみたい、
でも……まぁ、他にもしないといけない事が
あるには、あるんだけども……」
「甘露寺の家まで送る」