第16章 理由 前編
「私が、持っていても意味がないの!
私じゃこれは使えないからっ!」
「俺が言ってるのは、
そう言う意味じゃないっ!」
義勇の……言いたい事は
私にだって 理解できる
それも 痛い程…に
けど それじゃ…
前に進めないから…
私も そして 義勇も
「義勇!」
あまり口調を荒げる事のないあげはが
大きな声で義勇を呼んで
義勇が黙り込んでしまった
「でも、義勇……
貴方しかっ…、いないのよ……
これを振るっていいのは、
…義勇、貴方だけなの!」
水の呼吸の色に染まった
その青い刀身
亀甲を模した鍔
そして 悪鬼滅殺の 4文字
これを振う資格があるのは
水柱…だけ
冨岡義勇……ただ一人にしか
許されていない
ガッと 乱暴な手つきで
あげはが日輪刀の鞘を掴むと
ずいっとそれを義勇の目の前に差し出す
受け取れ と無言のプレッシャーを感じる
「俺は…、
俺には無理だ。これは使えない……」
思わず 目をあげはから
義勇は逸らせてしまった
あげはの顔を 直視……出来ない
「お願いよ、義勇。貴方にしか出来ないの!
無理なお願いをしてるのは、
私にも、分かってる。
でも……、彼の為にも受けとってあげて」
あげはの言葉に義勇がハッとする
「透真さんの……為に」
きっと この刀が
今ここにあるのは
そうなる事を 彼が…望んでいるから
だったら それは
彼の望みなのだから
だから 叶えてあげなくちゃ
私が……叶えてあげなくちゃ
彼がそうして欲しいと 願ってるのならば
「透真さんの為にも、鉄友さんの為にも。
貴方がやらなくてどうするの!
義勇、貴方は何なの!言って!」
義勇の胸元にあげはが当てた日輪刀を
義勇が全く受け取ろうとしないので
更にあげはが透真の日輪刀を
ぐっと強く押し付けた
「迷わないで!
答えて、義勇!貴方は何なの?」