第16章 理由 前編
「冗談にしたいのかもしれないが。
こっちは……どうだろうなぁ?
それに俺は……、煉獄みたいには
……待ったりもしねぇ、優しくもねぇし?」
「…………!?宇…髄……さん?」
宇髄さんの力で掴まれていたら
逃れる事は出来ないし
宇髄さんから見たら
今の私は
どんな顔をしているのだろうか?
私の顔を見ていた
宇髄が視線を逸らせて
「だったら、
……煉獄にちゃんと、言うこったな」
パッと掴んでいた手首を
宇髄が開放して
はぁーっとため息をついた
やれやれと言いたげに
ある方向を見て
あげはに迎えが来たぞと言った
そう宇髄に言われて
あげはがそちらに目を向けると
そこには訝しい顔をした
義勇が立っていた
「煉獄には、ちゃんと、話つけてあっから。
お前は、派手に安心しとけ」
「宇髄さん…っ…!」
話がつけてあると
言われてあげはが宇髄の方へ
向き直ると
もう その場所からは
宇髄の姿は なくなっていた
さっき宇髄さんが言ってた事からするに
私は宇髄さんに見事に
けしかけられてしまっている訳か……
どっちかと言うと
脅しにも近い それは
それをしないなら 覚悟しとけとも
取れる言動で……
ますます あげはは
宇髄の本心が分からなくなってしまった
何が 本心なのか 読めない人だな
「大丈夫か?あげは……宇髄に何か、されたのか?」
尋常ではない様子だったのを
心配してか義勇が声を掛けて来た
「義勇、ううん、何も。
ありがとう、様子…、見に来てくれたのね」
「いや、そろそろかと思ったから……」
じっと目の前にいる
義勇が私の顔を見つめていて
「義勇?どうかした?」
「いや、……あげはは元々、綺麗だったが。
今日はいつもよりも、綺麗に見える……何故だ?」
綺麗に……見える?
何故と言われても
それは私にも 分からないのだが
それにしてもまだ
見られてるな…義勇に
義勇だって整った顔してるのに
何故に
私に綺麗なんて言うのか……
視線が…痛い
「義勇、あんまり見られると
…困るんだけど?」
「ああ、すまない。見惚れてしまっていた」