第15章 それぞれの いとま
「俺とお前の足なら、半刻も掛からねぇよ」
「まあいい、付き合おう!」
そう言うのを確認したのか
しないのかもう宇髄の姿は
音もなくそこから消えて来て
俺も本気で追いかけなければ
宇髄に置いて行かれてしまうな
宇髄が本気で走ったら
俺では追いつけないし
追いつけるのは
不死川か悲鳴嶼さん位だろうが
大分宇髄は
ゆっくり走ってくれているのだろうが
相当な速度だな
流石は元忍だけの事はある
悲鳴嶼さんもそうだが
宇髄も大概の巨躯なのだ
それなのにこの速さ 素晴らしいな
確かに 宇髄は花見に行かないかと
言っていたが
その山間の少し開けた場所にある
一本の桜の木には
今が盛りだと言わんばかりに
満開の花が咲いていて
今は春なのかとそう勘違いさせられてしまう
「これは、見事だな……」
また あげはが戻ったら
ここに連れて来ようかと内心考えていたら
「そうだろ?ここは秘密の場所だからな」
秘密の場所?
「そんな大事な場所に俺を連れて来るのは
いささか、お門違いじゃないか?宇髄」
「俺の……じゃねぇよ。アイツのな……」
そう言って宇髄は
その桜を見上げながら誰かを偲んで
懐かしんでいるように目を細める
宇髄の言っているアイツとは
一体誰の事なのか
「煉獄、お前は、あげはから……聞いたのか?」
「聞いた?何の事だ?」
「アイツの話……」
そう言って宇髄は
満開の狂い咲きの桜を見上げていた
宇髄が言っているアイツが
三上 透真を指しているのだと理解した
「いや、何も……彼女は話したがらないからな……」
「お前が、聞きたがらない…でもなくて?」
これは 随分と
痛い所を突かれてしまったな
確かに俺からも
彼については 彼女には聞いていない
聞いて欲しそうに
彼女がしてないのもあるし
俺自身が 聞きたくないと
否定してる部分があるのは 確かだ
「お前はさ、どれぐらい知ってる訳?アイツの事」
「俺が彼の事で知ってるのは、鬼殺隊最強の
水柱と呼ばれていて、歳は彼女より4つ上……、
冨岡の師範だった事ぐらいだ。後は、氷の様な
冷たい笑みで笑う男だと言う事ぐらいだな」
杏寿郎が自分の知りうる
三上 透真について話したが
自分でも驚くほどに
俺は彼について 何も知らなかった