第15章 それぞれの いとま
「あの人は、そう言う人ですから……。
だから、嫌なんですよ。
私は……、優しい人ばかりが、
損をして不幸になるのを見るのは……」
カタン 物音がして
しのぶがその音の方へ目を向けると
そこには すみ・きよ・なほの3人と
アオイが立っていて
心配そうな面持ちでこちらを見ていた
「あの、しのぶ様……大丈夫ですか?」
「ええ、探し物は見つかりましたので、
もう大丈夫です」
そういつもの口調で言って
いつもの 様に 笑った
ーーーーーーー
あげはは夜中に目を覚まして
そのまま眠れないままでいた
きっと こんな夢を見るのは
あの列車で
彼の透真の夢を見たりしたから……
だから きっと
こんな夢を見るんだ……
透真の夢……
どんな夢を見ていたのか
憶えていないのに
私の目からは涙が零れていて
頬を濡らしていた
隣に眠っている蜜璃は
まだ 夢の中の様だった
「透真……」
スッと目を閉じて
記憶を辿る
極力 考えない様にしていても
ふっとした時に 考えてしまっていた
彼の事を……
私が鬼殺隊に入隊した時
丁度今から 10年前
彼は丁度 水柱になった所だった
あの夜のお礼を伝えに行って
お菓子を沢山 ご馳走になって
また 食べにおいでって言われて
お菓子が食べたいって気持ちもあったんだけど
私が水の呼吸を使えるからか
何度か継子にならないかと
話を持ち掛けられたけど
私は自分が柱候補になるのには
相応しくはないと断った
でもそれには理由があって
看護婦の資格の勉強をしたいと思う
気持ちがあったから
あの夜の様な事が
起きて欲しくないと
そう願って鬼殺隊に志願したと言うのに
自分が看護婦になると言う
ずっと幼い頃から抱いていた夢を
私は捨てきれていなかったから……
入隊して 1年が経って
私が鏡柱になった後も
私は 今までの様に
水屋敷に通っていた
『あーあ、残念だなぁ~』
透真がボヤくようにそう呟いた
『何が、残念なんですか?透真さん』
『だってさ、あげはちゃん。
柱になっちゃうんだもん。それも、1年で、
柱になっちゃうとか、聞いてないしさ。
せっかく僕の継子に、
なってもらおうと思ってたのにぃ』
そう不満そうな顔をして透真が言った