第15章 それぞれの いとま
「後、ここの見世小せぇけど、
元々大見世の格子だった妓だからな。
ここでは散茶だが、格子ばりに張るぞ?」
と不死川に金は大丈夫かと
確認している様だった
「ああ、そうかよ…、結構なこったなぁ」
後はお前の好きにしろと
バンバンと背中を叩かれて
宇髄は自分の仕事へ向かって行った
宇髄に連れて来てもらって置いて
何ではあるんだが
気乗りしねぇ…な
アイツに似てるってのも
逆に罪悪感が生まれそうだし
今度アイツに会った時に
かなり気まずい感じがしそうだしよ?
帰るか
と思ってその前を過ぎようとした時
ぐいっと袖を引かれた
「……旦那さん」
袖を引いた主の顔を
不死川が確認する
近くで見ると
やっぱり……似てんな アイツに
しかし…だ
大見世で格子までしてた
ここの一番人気がわざわざ客の袖引くたぁ
随分と商売熱心じゃねぇかよ
格子越しに遊女と不死川の視線が
絡み合ってそのまま
見つめ合って 逸らせないままで……いて
声を聞いて……
ああ と思った
顔よりも声の方が アイツに似てるとか
卑怯すぎんだろーがよ クソが…
だが…
クソみてぇなモンだが……
叶わない 恋を忘れる為に
偽りの 一夜の恋をするのも
悪くねぇ… か?
遊女から視線を逸らせて
目を伏せるとふぅっと漏らすようにして
ため息をひとつ 不死川がついた
「いいぜ、買ってやるよ。
高けぇらしいじゃねぇか。お前…」
買ってやると言ったのに
目の前の遊女は淋しい目をしていて
スッと俺の頬にその手を添えて来て
不死川がその手を外させようと
手首を掴んだ
驚くほどに細い
不死川が少しでも力を込めれば
簡単に折れてしまうのではないかと
思ってしまうほどに
その遊女の手首は細かった
それに 少し袖が捲れて
その下の腕がちらりと見えていた
白い白い 細い女の腕だった
剣を握らない女は
こんなにも細い腕をしてんのか……
「旦那さんは……、
何か悲しい事でもありんしたか?」
と静かに言った
この距離だが
肌磨きに自信があるのか
白粉には頼ってないらしく
その遊女からは白粉の匂いがしなかった
何も人の痛みや悲しみに
敏感な所まで似てなくてもいいのにな
ぼんやりとそんな事を考えていた
「どうだか…なァ」
と不死川が短く言って
その小見世の戸をくぐった