第14章 束の間の いとま
「この間の、アイツより、強ええのか?」
伊之助がいつになく静かに言った
「鬼になる前から、
鬼殺隊最強の水柱と称賛されていたからな」
鬼殺隊 最強の水柱……
その鬼の 人の時の実力は
冨岡さんよりも上って事 なのか?
「彼の名前は、三上透真。
冨岡は彼の継子だった」
「でも、鬼になると……
人の頃の記憶は……なくなってしまうんじゃ」
「大概はそうだが、まれにそれを
持っている鬼もいる。人を食えば喰うほど、
年月が経てば経つほど、それは薄れると言うが」
「えええ?でも、それがしたくて、そいつは、
鬼になってるんでしょ?そんなやつが、
忘れるとも思えないんですけどー?」
「俺が、聞きたいのは、君達がこの私情しかない
俺達の戦いに、関わりたいかどうかだ」
彼等には
関係のない戦い
言わば 私闘なのだ
彼等には 参加する理由が
……あれば別の問題だが
「はんっ!愚問だな、当然だ!
あげるがソイツの所為で、
嫌な思いしてんだったら、
倒せばいいだろーがよ!」
「そうだな。伊之助。煉獄さん、それは
気を使って頂く必要はありません。
俺達は……今まで」
炭治郎が今回の負傷ではない
腕に残る傷跡を擦る様にして押さえた
善逸もあげはに手当をしてもらった
この間の頭の傷跡を手で押さえていた
「あげはさんに、助けて貰ってばっかりだったので!
戦いでも、そうでない時でも、禰󠄀豆子の事でも……」
「炭治郎の言う通りだから!俺も、そう思ってるし」
「そうか、愚門だったか。すまなかったな、少年達」
「オイ!ギョロギョロ目ん玉」
伊之助が杏寿郎を呼んだ
「ん?どうした?嘴平少年」
呼ばれた杏寿郎も伊之助と視線を合わせる
「ソイツ、ブッ倒したら、
あげるとケッコンシキすんのか?」
「こら、伊之助、今はそれは……」
伊之助の発言を炭治郎が窘めようとした所に
「ああ、そうだぞ!少年。そうするつもりだ!」
「本当か!エビの天ぷら、あげるが
沢山用意するって言ってたかんな!」
「ああ。勿論だ!タラの芽の天ぷらと、鰻もだがな!」
そう聞いて
炭治郎と善逸の顔が明るくなった