第14章 束の間の いとま
「蜜璃ちゃん、一刻程、時間貰っていい?」
「そ、それはいいけど……」
こうして
蜜璃に型を見せてもらって
一刻の時間を貰って
鏡で映した型を 自分に押し込んでいく
かなり付け焼刃なのは 自分でも理解している
蜜璃ちゃんの型が使えるようになれば
きっと戦況が有利に進む場面があるはず
ハァ ハァ ハァ……
自分の呼吸がかなり上がっていた
全集中の常中が途切れてはいないが
額からも汗が滲んで
木刀を握る手が震えていた
私も 体力……ちょっと落ちてるな
しょうがないか 仕事もしてないし
負傷のせいで 稽古だってしていないのだから
「休憩、しましょ?無理はいけないわ」
ね?っとお菓子を飲み物を持って
蜜璃があげはに声を掛けた
「ありがとう、蜜璃ちゃん」
「ねぇ、ねぇ、あげはちゃん。
お話……聞いてもいいのかしら?」
ストンと蜜璃があげはの隣に腰を降ろした
それにつられるようにしてあげはも腰を降ろす
蜜璃から差し出された
レモンを絞った水に少しだけ
はちみつを入れた物をあげはが飲み干す
レモンにはクエン酸が入ってるから
疲労感を回復させるし
はちみつの糖分もありがたい
蜜璃ちゃんの気遣いが 体に染みる
少しだけ入ってる塩も……身体が欲してる物だ
空になったコップを返すと
蜜璃がお代わりを注いで
あげはに手渡した
「いいよ」
「え?いいの?」
「だって、ご教授して頂いてますもの……」
あくまで蜜璃の質問に答えるのは
この修行に
付き合わせているお礼と言う訳
「聞きたい事が沢山ありすぎて、
迷うわ~。じゃあ、じゃあ、
そ、その、指輪は…どんな風に貰ったかー、
……とか?」
そう言って声を顰めて蜜璃があげはに聞いた
「ねぇ、蜜璃ちゃん、前に……
108本のバラの花束を抱えた男性に
プロポーズされたいって言ってなかった?」
「それは、言ったのは、言ったけど。どうして?」
自分が聞いた事とあげはが言った事が
蜜璃の中で上手く繋がらなかったようだ
今それが何の関係があるのかと
言いたげに蜜璃が返してきた
「くれたんだよ。バラの花束」
「バラの花束を?誰が?」
「誰って、杏寿郎さんに決まってるでしょーが!」