第14章 束の間の いとま
その頃 あげはは蜜璃の元を訪ねていた
必要最低限の荷物を持って
蜜璃の家の門を叩いた
「あげはちゃん?いらっしゃーい!
さあさあ、上がって、上がって?
今、紅茶を淹れるから……、
でも、驚いちゃったあげはちゃんが、
私に稽古を付けてほしいだなんて」
「うん、でもあんまりゆっくりも
してられなくて……。こっちからお願いして
おいて、ごめんね。蜜璃ちゃん」
ギュッとあげはの両手を蜜璃が握る
「いいのよ。あげはちゃん、
私とっても嬉しいの!
だって、あげはちゃんに
頼りにされたのって、初めてだから」
「ありがとう、蜜璃ちゃん」
じぃーっと蜜璃があげはの顔を見ていて
ああ 蜜璃ちゃんも顔の傷気になるのかな?
化粧で綺麗に隠れてると思うんだけどもなぁ
「あげはちゃん、綺麗になってなーい?
ううん、気のせいじゃないわ!
元々あげはちゃんは、可愛くて、
綺麗だけど。あれだわ、色気!
色気が出てる気がするっ。ま、まさか…
あげはちゃんっ、ついに。煉獄さんと…」
今にも大きな屋敷中に響き渡る声で
蜜璃が叫びだしそうだったので
あげはがその口を塞いだ
「み、……蜜璃ちゃんっ、
大きな声で言わないでっ、恥ずかしいから……」
そう言って恥ずかしそうにしている
あげはを見ていると ドキドキしてしまう
可愛いわぁ あげはちゃん
「そう言えば、私に稽古を
付けてほしいって話だったわよね?」
「これを、蜜璃ちゃんに見てほしくて……」
そう言って腰に差していた
新しい日輪刀を蜜璃の前にかざすように見せた
流麗な所作でその刀を鞘から抜き取ると
蜜璃にその刀身が見えるようにして
「あ、あぁ、あげはちゃんっ!
こ、これ、もしかしてっ……」
蜜璃が驚いたようにして
声を大きくして問いかけて来る
「前よりも、炎の呼吸への適応が
高まった所為だと思うんだけど……」
花の呼吸の桃色とも違う
あげはの日輪刀のこの桃色は
蜜璃は良く知っている色で
紛れもなく
恋の呼吸への適正があると言うものだった