第13章 湯治編 小さな蜜月 ※R-18
その日の夕食の時に
部屋で飲みたいからと頼んで
冷酒を氷と一緒に頂いてきた
もちろんそれは離れの温泉で2人で飲む為だ
「今日は光明も見えたし、
今夜は……酒が進みそうだな」
温泉に入る前に体を洗っていると
隣からそう声を掛けられた
「沢山飲んでも、いいと思いますけど。
あ、そう言えばたまに本を読んでるけども、
何を読んでるの?」
呼び捨てたついでに口調も大分砕けてくれたな
「知りたいか?」
「炎の呼吸の指南書とか?」
「父上から、頂いた物には違いないが
指南書は指南書でも…別の指南書だがな」
ニヤニヤと杏寿郎が不敵な笑みを浮かべた
別の指南書と言うと 何の指南なのだろうか?
その不敵な笑みって もしかして
でもそんな本 槇寿郎様が…そんな
自分の息子になんて
「後で湯上がりでも、見てみるといい。
中々に興味深いかも知れんぞ?」
一緒に温泉で冷酒を楽しんで
髪を乾かしている間も
布団の上で寛いでいる杏寿郎は
その本を見ていて
その本 よっぽど……
興味深いような事が書いてあるのかな?
おいでと手招きされて
髪を乾かし終えて膝の上に乗るよう促されて
そうすると
「君の意見も、参考にしたいしな」
「私の意見?参考って?え、これって…」
あげはが杏寿郎が読んでいた
本の中身に一瞬 目を通すと
すっと視線を 逸らして
「指南書だが?」
「いや、確かにそうかも知れないけど!
あっ、え?もしかして……、
これ参考にしてたとか…」
いわゆる夜の方の指南書だ
通りで 彼が異様なまでに
手慣れていると思ったんだ
そうだったのか本の知識だったのか
勤勉で探求熱心な
彼の性格だから そうなった……と
でもあまり本で色々な知識を得られると
こっちとしても 乱れさせられすぎて
どうしようもなくなりそうなのだけども?
「し、槇寿郎様がこれを?」
「俺があまりこう言った経験がないのを、
父上も気にしておられたのでな!それとも…
君が、手取り足取り指南してくれたのなら、
それも良かったかも知れんがな!」
パラパラとページをめくって
「こう言うのはどうだ?」
とあるページを開いて
杏寿郎があげはに意見を尋ねた
「そ、それはちょっと…」