第13章 湯治編 小さな蜜月 ※R-18
でも
穏やかなお日様のような笑顔の中に
恐ろしいくらいに冷たい笑顔を
見つけるようになったのは
いつからだったのだろう?
透真さんが 透真さんじゃ
無くなって行ってしまったのは
いつからだったのだろう?
あげはさんが
彼を討つのを決意出来なかった理由を
私は知ってるから
冨岡さんも私も それと同じ理由で
彼を 討つのを 躊躇っていたから ずっと
しのぶが机の端っこに紙を広げて
速記を使ってあげはへの返事をしたためると
窓の所で返事を待っていた
あげはの鴉である環にそれを託した
「でも、これは透真さんに取って大きな誤算
だったでしょうね?あげはさんの、耳の中の術を
解かれた事…後悔してもらいましょう」
そう言ってくすくすと
しのぶが嬉しそうに声を立てて笑った
夜になる前に環が返事を持って戻って来たと
里の人に教えられて手紙を受け取りに向かった
そう言えば
今回は善意で離れを使わせてもらってるが
雨漏りの修理はまだ 掛かりそうなのかな?
「あ、そうだ、雨漏りの修理って
いつ頃までかかりそうですか?」
「雨漏り……ですか?」
雨漏りの修理と言われて
里の人は何を言ってるんだと言う顔をして
あげはは事の経緯を説明すると
里の人からの返事を聞くと
「そ、そうだったんですか…、
すいませんでした」
あげはが手紙を受け取りに行ったと思ったら
凄い勢いで走って戻って来て
雷の呼吸を使ってまで急いで帰ってくるような
必要があったのかと考えていると
「聞きましたよ!杏寿郎っ!!
全部嘘だったんですね?雨漏りしてないって!!
説明して貰いますからね!」
離れで読書をしていた杏寿郎が手を止めて
「ああ、その事か。俺が里長に2人で
入れる温泉を用意してもらいたいと、
依頼したんだ!ああ、そう言えば
まだ、一緒に温泉で冷酒を飲んでなかったな」
杏寿郎の言葉にあげはがハッとして
「も、もしかしてこれ
…あの時のお礼だったんですか?」
「どこか君と、温泉旅行でも行ければ良かったが、
中々、柱をしているとそれも難しいからな!
して、返事はどうだった?」
そうだったんだ 杏寿郎
あの時 これを考えてて
ああ 言ったんだ