第13章 湯治編 小さな蜜月 ※R-18
さっきの私の耳からの出血
音だけであんな風に傷つける事も
現実に可能なのだから…
宇髄さんの呼吸なら爆音が出るし
相殺する事もできるかも知れないけど
音は離れてても聞こえるし
本当に環を呼ぶのに
使ってる笛で相殺できるのか
試した訳じゃないし不安は残る
透真はみんなが
協力してくれるって事も知ってる
それでも自分が負けないって自信があるから
「どうした、考え事か?」
「ええ、少し思うところがあって…」
あげはは 何かを思い立ったようで
胡蝶に鴉を飛ばしたいと言っていた
里の位置は隠されているので
直接鴉を呼んだりは出来ない
里の鴉を通して他の鴉を経由して
自分の鴉に伝える
かなり回りくどい方法を取っている
あげはは里の鴉のいる所まで
手紙を届けてくると行ってしまった
あげはの手紙は
その日の夕方にしのぶに届けられた
速記で書かれたあげはからの手紙に目を通す
「まぁ、私もある程度は想定内ですよー、
声じゃなくて音を操る、それは錯覚を
引き起こす…」
しのぶが自分の前に並んだ
試験管の一つを取り上げると
その中身をもう一つの試験管に移した
「煉獄さんから話を聞いて、私も我妻君に
話を伺ったんですよ?我妻君にもっとちゃんと
お話を詳しく伺ってたら、煉獄さんも気が
付いたかも知れませんが…、
まぁしょうがありませんけど」
しのぶがシャーカステンにセットされた
一枚のレントゲン写真に目を向けた
カナエ姉さんからの手紙と共に
引き出しの奥底の方に隠されていた
このレントゲン写真
カナエ姉さんは これに気が付いていた
だから これを隠したんだ
きっとこれを 見つけにくい所に隠した理由も
これを捨ててしまわなかった 理由も
今の私には理解できる 姉さんも……
「これが、私に……答えを
教えてくれたんですけどもね?
カナエ姉さん感謝していますよ」
自分の記憶の中をしのぶが探っていく
昔 彼はあげはさんに会いに
良くここへ来ていた
その頃の彼は 透真さんは
あんな風に笑う人じゃなかった
お日様の様な穏やかで
日向の様に温かくて
とても 優しくて
穏やかに笑う 人だったのに
透真さんは私にも とても優しくて
自分の兄のように 思っていたのに
「透真さん…、貴方は今も……」