第13章 湯治編 小さな蜜月 ※R-18
「恐らくだが、これは日輪刀でないと壊せまい」
杏寿郎がそれを拾い上げて外へそのまま
出て行こうとする
「陽光なら、消滅させられるだろうからな」
あげはの返事を待つこともなく
それを持って外へ出ると手の中のそれは
跡形もなく消えてしまった
あげはが慌てて履き物を履いて
俺を追いかけて来たが
俺の手にあった物はもうなかった
「もう、これが君に作用する事は無くなったが。
どうやって、君に寄生させたかは、
分からず仕舞いだがな」
「その事で、思い出した事があって……」
「思い出したこと?心当たりがあるのか?」
「彼の声が聞こえる様になった少し前に、
蝶屋敷にバラの花束が届いたんです」
「君宛てにか?」
「ええ、差出人は不明でしたが。色と本数が
不気味だったので…記憶に残っていて
その時に、小さな虫、みたいなのが右の耳に…」
「その、虫の様なものが、血気術だったのか…」
バラの花束が不気味とは
どう言う事なのだろうか?
「そのバラの花束は、
真っ黒のバラが4本だったので……」
真っ黒のバラだけでも 十分に不気味だが
その上 4本は 日本人なら避ける本数だ
「確かにそれは、不気味だが
……意味がありそうだな」
「黒いバラの花言葉は、憎しみと恨み……後」
彼が彼女に恨みや憎しみを持っていたのか?
自分から彼女の手を離しておいて
浮気されたつもりにでもなっていたのか?
「あなたはあくまで私の物……」
ゾワッと背筋を寒気が走ったように感じた
なるほど 彼らしいな
あげはは自分の 物だと……
「それから、
決して滅びる事のない愛と永遠……」
「あまり聞きたくも、無いが
4本の花束にも意味があるのか?」
「4本のバラの花束の意味ですか、それは……
死ぬまで気持ちは変わらない……ですよ」
「確かに、彼の気持ちは変わらないだろうが。
君の気持ちは……どうなんだ?」
私の中に 彼を想う気持ちが
まだ 残ってるのかと 彼は聞いていて
「その気持ちがあるのなら、
私は…ここには居ませんよ」
そう言って ほほ笑んだ
でも 透真の音の血気術
かなり 厄介な血気術かもしれない