第13章 湯治編 小さな蜜月 ※R-18
さっき もう確認しないって言ったのに
どうしてまた確認するの?
いつの間にか壁についていた手を降ろして
あげはの手に重ねると
グイッと壁に押し付けるようにして
両方の手首を掴んで
あげはの顔の横辺りで固定する
そんなにきつい拘束ではない
振り解けない程でもない…けど
何故か抗えないと…感じてしまって
「…いいって、言いましたよ?…私」
「そうじゃない言い方では?
言ってはもらえないだろうか?」
許可とか容認じゃないなら
希望とかそんなんだ
それは私が 杏寿郎さんが欲しいとか
欲しいとか きっと
そんな感じの言葉に違いない
だけど…そんな事…
「…杏寿郎さんっ…、あんっ」
「どうした?」
首筋に舌を這わせながら聞き返して来る
返すまでの間も 首筋に舌を滑らせていて
「…私の…あっ、事…を、杏寿郎さんでっ…
満たして…ふっ、…欲しい、です…。
沢山…、んんっ!あっ、
何も、考えられなくなる…くらいっ」
私の中にある どうしようもない
不安すらも 彼で満たして
全て 忘れて 彼だけの事を考えてたい
せめて 今だけでも……
杏寿郎さんだけを 感じていたい
自分の事を俺で満たして欲しいとは
なんとも男泣かせな事を言ってくれる
そんな声で そんな顔をされて
そんな事を言われたら
こっちだって正気ではいられない
「そんな事を言っていいのか?
お手柔らかじゃ済まなくなるぞ?」
彼女の両足の間に自分の膝を差し込んで
そのままねじ込んで 押し込む
まだ彼女の足の奥の
付け根までは当たってはいないが
彼女の体が少し跳ねて
「あぁん、
ハァ、…んっ、それは…ダメです…」
否定的な内容ではあるが
その瞳が潤んでいて
可愛らしい事この上ない
君が俺で 君を満たしてほしいと
君が感じて思っている以上に 俺も
君で 満たされたいと
君を感じていたいと 思っているのだが?
彼女を抱いた所で
この不安が消えるとも思えない
彼を討つまでは
きっと消えることはないだろう
だが 今は…
今だけは それすらも忘れたい
君に 溺れてしまいたい