第13章 湯治編 小さな蜜月 ※R-18
むしろ 私が悩んでいるのは
彼に抱かれるとか
抱かれないとかではなくて
自分の気持ちを落ち着けるのに
彼を利用してしまって
いいのだろうかと言う
そっちの方の 心配だったりするのだけども
「ごめんなさい、杏寿郎さん」
彼に聞こえないほどの
小さな小さな声であげはが謝った
おそらく彼女は俺に
聞こえない様に言ったのだろうが
その言葉は 聞こえていた
でも彼女が
聞こえない様に言った言葉だったから
俺はその言葉を聞かなかった事にした
俺が感じている
どうしようもない不安を
彼女も感じているのだと
俺が確信を得るのに その言葉は
十分だった……
堪らない不安を埋めるのに 俺が
彼女を求めてしまっているのも
また 紛れもない 事実なのだから
そんな話をしている間に
いつの間にか 離れまで戻って来て居た
入り口の前に立って
杏寿郎が答えを求めて来た
「して、
君の答えを聞かせてもらいたいのだが?」
一刻の猶予も与えられないのは…つまり
この問いへの答えも含めて…って事か
でも この状況で
断る理由なんて見つからない
「あのっ…、
お手柔らかに…お願いしたいのですが?」
「善処しよう、
だが…あまり期待はしてくれるな」
あまり期待はしてくれるな
と宣言されてた通りに
離れに入ると杏寿郎が乱暴に
戸を閉めると鍵をガチャンと落とした
「あげは…、
最後にもう一度だけ…確認しておくが」
まだ履き物も脱いでいないのに
玄関の壁際に追いやられて杏寿郎の気迫で
私が思わず下がったら壁際だったんだけども
玄関の壁際に追い詰められてしまった
「杏寿郎……さん?」
ドンッと両腕で挟まれるように
壁に肘から下をつかれて逃げ場がない
すぐ目の前に杏寿郎の顔があって
その視線が熱い見られてるだけで
どうにでもなってしましそうだ
「本当に…いいんだな?」