第12章 湯治編 刀鍛冶の里にて
内部に核となる部分があるはずだ
透明な水なら見えるだろうが影に色があるから
それを隠しているのだろう
像が時折歪むのは本体は離れているという証拠
「君は…どこまで気がついてるの?」
透真が静かに杏寿郎に尋ねてきた
聞いては来ているが彼の中には
それなりの確信はあるようにある
「どこまでだと…推測している?」
「さあね?だからでしょ?」
「何の事だ?」
ニッと目の前の透真の影が笑う
彼はあげはの話によれば
あげはより4つほど年上だったはずだが
いや4年経っているからあげはと同じ歳なのか
彼も童顔のせいもあって
随分若く感じさせられる
俺と同じくらいだと言われれば
そうも見えなくもないな
だが…その笑みの奥の冷たさは
あの時と同じか…
「だから…、
あげはの事、抱かないんでしょ?」
「身体の結びつきに…俺は拘らない。
お前の目的はなんだ?」
杏寿郎が静かに言い放った
「うーん、君を彼女の前で殺すことかな?
それで完成する…。
日輪刀はいつ仕上がりそう?その時が、
楽しみだなぁー。そうだなぁ…じゃあ、
みんなにも伝えておいてよ」
皆に伝える?
皆で倒そうとしているのは彼も
知っているだろうに
わざわざそんな事を俺に言うのか?
変な男だ いや鬼か
「ねえ、君はさ…あげはから、
あの話し聞いたでしょ?」
あの話と聞いて 杏寿郎が僅かに反応した
他の何でもない
あげはが鬼殺隊に入る前の話だ
彼は俺達の会話を聞いていたのであろうから
その話を俺があげはから聞いた事は
彼自身も当然 承知の事のはず
どうして わざわざ
俺に確認を取る必要がある?
考えられるとするならば……
俺の推測している通りなのなら
「やはり、
彼女が知っているのは真実ではないな?」
「知りたい?」
何とも言えないような含みのある
笑みを浮かべて 彼は透真は笑った
「だが、聞いた所で真実とも知れんしな」
「そうだなー、例えばあげはは、
初めから、傷物じゃなかったとか…ね」
あの夜の真実は彼しか 知り得ない
あの日 彼女が蹂躙されてた事すら
偽り……なのか?彼の
だとしたら 何故?
彼は 彼女にそんな嘘をつく
必要があったと言うのか?
何故?