第12章 湯治編 刀鍛冶の里にて
「んっ、…ふっ…、あ、ん゛んっ…」
「あげは…、君は…可愛いんじゃなくて…」
口付けの合間に 一度唇を解放されて
すぐ耳元で杏寿郎の声がした
「可愛いが過ぎるぞ?
どうしてくれるつもりだ?」
声が甘くて熱くて 聞いてる耳が熱くなる
どうするもこうするも
こっちがどうにでもなってしまいそうなのに?
ドンドンドンと戸口を叩く音が聞こえて
慌てて体を離した
「炎柱様、こちらにおられますでしょうか?」
と戸口の外からお伺いを
立てる声が聞こえてきて
「いかにも、
俺はここだが。何か用でもあるのか?」
杏寿郎の返事に失礼しますと
ガラガラと
戸が開く音が聞こえて
「長が、炎柱様とお出会いしたいと、
おっしゃっておられます」
鉄珍殿が俺に出会いたいか
丁度 俺も会って話したいことがあったのだ
「うむ。俺にか、あげは、すまないが
しばらく外す。君は饅頭でも食べて
ゆっくりしているといい」
「はい、適当にしていますので。お気遣いなく…」
そのまま戸口の方へ向かうのではなく
こちらへ向き直ると
スッと指を2本
あげはの唇に当てる
「杏寿郎…さん?」
あげはの耳元に杏寿郎が口を寄せて
「なるべく、
すぐに戻るから、いい子にしてるといい」
そう囁くと耳をなぞる様に舌を滑らせた
「すぐ近くに人がいるんだ、
声は堪えてくれるか?」
私の口に指を
当ててるのってその合図だったのか
そのまま返事を待たずに
あげはの首筋に吸い付くと赤く跡が残る
その自分の付けた跡に杏寿郎が口付ける
その感触にあげはが小さく体を震わせるが
言われた通りに声を漏らさなかったのを見て
ふっと杏寿郎が満足そうに微笑むと
「いい子だ。戻ったら、また続きを…しよう」
そう言って ポンポンと頭を撫でた
「炎柱様ー?」
返事があったのに
一向に杏寿郎が出て来ないのを気にしてか
外から呼ぶ声がして
「ああ、今行く」
1人残されて
しばらく体に残る余韻でぼんやりとしていた
「……………えっと」
さっき 戻ったら
続きするって 言ってなかったっけ?
続きって どうする感じの続き?
もっと 違う所に 跡を付ける感じの続き?
ん……って 跡?
跡!