第12章 湯治編 刀鍛冶の里にて
自分の体にあげはの体を持たれ掛けさせると
よしよしと背中を撫でられる
それから 優しく頭を撫でられる
もう 落ち着いてると言っているのに
杏寿郎さんは…優しいな…
さっきの鉄珍様の言葉…
自分の幸せの為に…戦いたい
この人を死なせたくないし
この人と…一緒に…生きたいって
今はそう 思ってる
ずっと もう 誰とも 一緒になれないって
なっちゃいけないって 思っていたのに
決めていたのに
ギュッとあげはが杏寿郎の袖を掴んで
じっとまっすぐに視線を向けてくる
「私…、杏寿郎さんの事…守りたいです」
目の前にあった彼の顔が
一瞬驚いて目を見開いたかと思うと
ふっと笑った
「君は確かに……強いが、
…俺に、君を守らせてはくれないか?」
「杏寿郎さんには、死んで欲しくないし、
死なせ…たくないです…。
例え、……何があっても…絶対に」
「あげは、君の気持ちは嬉しいとは思うが…」
その彼女の言葉が
彼女の粉う事なき心情の表れで
あることは確かで
彼女が俺を
心の底から必要だと欲していると
知るに十分な物だった
きっとこの会話も つつ抜けてるのなら
彼としては
心中は穏やかではないはずだろうが
文字通りの深い仲になっていない俺が
彼女とここまで深い結びつきを得るのは
俺が彼の立場であるなら
気に入らない事この上ないに違いない
指を絡ませて手を繋ぐと
「あげは…、口付けてもいいだろうか?」
こんな状況で……
口付けるのに許可なんて いらないのに…
「あの、
…確認してもらわずとも、いいですから…」
「君の言葉通りだと、俺がしたいと思った時に
いつでも口付けていいことになるが?」
そう理解していつつも確認をとってみる
「いい…って、言ってるんですよ、
いいに決まってます」
「前に、もう少し君の素直な言葉が
聞きたいとは、言ったのを記憶しているが、
…あまり素直になりすぎるのも…」
キュッとあげはが
杏寿郎の胸の辺りの服を掴んで
「い、今は…ダメ、…ですか?」
と可愛らしく尋ねられては
…しないとは言えない
「するに…、決まっている!が、その…
手加減が…できないかもしれないぞ?」
そう宣言された通りの
熱い口付けに頭がクラクラして
息が上手く継げなくなりそうだ