第12章 湯治編 刀鍛冶の里にて
「アンタに前に、あんな偉そうな口聞いといて、
ワシの刀がアンタを殺すとこやったんや!
堪忍したってでは、すまへんねん!」
「でも、私ちゃんと、生きてます。
鉄珍様の刀のお陰で」
そう言ってあげはが
自分の心臓の上に手を当てて
にっこりと微笑んだ
「昔、アンタがワシの刀折った時の事…、
憶えとるか?」
後にも先にも刃こぼれこそはあったが
刀を折ったのはその時だけだ…
「4年程…前だと、思いますが…」
あげはの4年と言う言葉を噛み締めるかのように
「そうか、…もう、4年も…なるんやなぁー」
懐かしむかの様に鉄珍は言った
4年前 彼がいなくなって
行方不明になって死んだのだと言われて
私は酷く 動揺して心を乱された
自分の心の支えであった彼がいなくなって
自暴自棄になってしまっていた
滅茶苦茶に鬼を斬った
斬って 斬って 斬って…斬りまくって
そんな戦いをしていた
ある日 何の前触れもなく
戦っていたわけでもないのに
ポッキリと折れてしまった
とにかくその時は
すっごいすっごい 怒られて
“死にたがりにやる刀はない!
アンタに打つ刀なんかあらへん!”
とまぁ 酷い言われ様だった
鬼を斬りまくって折れたのだから
鬼殺隊としては
間違えてはいなかったのだろうが
鉄珍様の言葉通りに
その時の私は 戦いの中で死ねたら…と言う
気持ちが強かったのだろう
それほどまでに 心がダメになっていた
彼に依存していたのだろうそれ程に
「それもこれも、その前に…もっと、
わしがちゃんとアンタの事止めとったら
…良かったんや」
彼が透真が行方不明になる1年前
透真と婚約した時 鉄珍様だけが
それに難色を示していたのを憶えている
当時の私はまだ18で若くて
鉄珍様が言わんとしていた事が
理解出来ずにいた
「鉄珍様が、…ご自身を責められる事では
ありませんよ。あの時の私には、きっと誰の
言葉も届かなかったと思うので。それほどまでに、
私は彼を…信じ切っていたので」
恋は盲目と言うけれど…
彼の言葉だけを信じて
他の誰かの言葉なんて耳にも入ってなくて
「でも…、アンタは変わったんやろ?
あん時とは、違うやろ?」