第11章 バラと琥珀糖
「鴉の世界で上手く生きていけずに、
痩せ細っていたのを、お館様に拾われて、
鎹鴉として育てられたけど。人語を
話せなかった為に、なかなか隊士につけず…
最終選別の後も、誰かの所に行けずにずっと
隅っこにいたので……」
「君から声をかけたのか…?」
「そうですよ。私の鎹鴉にならないかって」
カァーと白い鴉がもう一度鳴いて
「ああ。ごめんっ!環、お手紙だったね」
と鴉に謝りながらあげはが手紙を開いた
「もうすぐ、刀の打ち直しが
できるらしいですよ」
その手紙の文字を見て杏寿郎が顔を顰めた
文字と言うにはあまりにも図形?
象形文字?の様な記号とも取れる手紙だ
そう言えば列車の中で彼女が
手紙をしたためる速度も
数枚書いたにしては早かった
「その文字…は?」
「速記ですよ」
「環は人の言葉は話せませんが、他の鴉よりも
速く飛べるので、手紙同士でやり取りするなら
他の誰にも、負けませんから!」
そう言って彼女が環と言う白い鴉を褒めると
鴉の方も満更ではない様子だった
「だったら、
俺の刀の打ち直しも同じ頃だろうな」
同じ時に破損してるのだ
刀が打ち上がる日数は同じなのだから
同時期に完成するはずだ
「でしたら、湯治がてら、ゆっくりして
来られたら如何ですか?こちらとしても、
その方が気を遣わなくて済みそうですし」
気を遣われているのか嫌味を言っているのか
どちらとも言える言い方でしのぶが言った
「しかし、俺の鴉がまだ…戻ってないしな」
「だったら、環。杏寿郎さんの鴉に届けなくて
いいよって伝えてくれる?それから隠に
お里に行きたいって伝えて来てくれる?」
カァーと鳴くとあげはの鴉が飛んでいった
「いいのか?手紙を託さなくて」
「いいですよ。隠は環が伝えたい定型文を
紙で用意してくれてるので、手紙付けなくても
鴉同士なら、意思疎通できますし」
「今から、出られたら夜までに間に合いますし」
と胡蝶が言っていた通りに
夕方になる前に里までの
案内をしてくれる隠が2人来て
俺とあげはは刀鍛冶の里を目指した
「毎度ながら、
すいませんっ…お世話になります」
配慮してくれてなのかあげはは女性の隠が
おぶってくれる様だった