第11章 バラと琥珀糖
「あげは、君に特命を授けようと
思っているんだが、どうかな?
君にその1戦だけ…、それを着て
戦ってもらいたいんだ、彼と鏡柱としてね。
あげは、君が透真を救ってくれるかい?
負の呪縛から…ね」
救う… 倒してほしいじゃなくて
産屋敷は彼を救ってほしいと言った
負の呪縛から…
「透真も…また、私の子だからね。
あげは…あの子は君じゃないと…救えない。
引き受けてくれるかい?君にとって、辛い
…戦いを強いてしまうね…」
辛い戦いーー
ギュッと隣に居た杏寿郎が
あげはの手を握った
彼に手を握られて自分の手が震えていた事に
私は気がついた
震えが 止まった
「謹んで、その命お受け致します…」
そう言って地面に頭をつけるほど
深くあげはがお館様へ頭を下げた
「あげは、君は君を…責めてはいけないよ。
君に辛い戦いを強いる事を、許してほしい。
すまないね。私は…知っていたんだ、
彼を…止められなかった」
「お館様!お館様のせいでは…ありませんっ!!」
そっと あげはの頭を
自分の子の頭を撫でるように
優しく産屋敷が撫でた
「あげは、君は…優しい子だ…。私は君の
幸せを願っているよ…」
私の望みを叶えてくれるかい?と聞かれて
言葉にならずに何度もうなづいた
自分の手の中にある羽織を眺める
私がこれを着て
彼を討つ
それは その時だけもう一度
私が “鏡柱”に戻ると言うこと
「あげは、杏寿郎。……いい報せを待っているよ」
「御意。必ずや、お館様のご期待に
添えるよう、尽力して参る所存です」
と頭を深く下げて杏寿郎が答えた
「御意。心血を注ぐ所存にあります」
同じようにあげはも深く頭を下げて答えた
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お館様の元を辞して産屋敷邸を後にする
まだ午前中だったし
特に何も予定もなかった
刀が打ち直しにも時間があるし
そもそも折れた肋骨が
治ってないから鍛錬もできない
リハビリがてら街でも
歩いて来たらどうですかと
胡蝶に提案されていたので
隣を歩いているあげはに杏寿郎が声をかけた
「どうだ、あげは。街にでも行かないか?」
「それは、いいですけど。何をしにですか?」
「逢引きだが?こんな休みもなかなかないし、
どうだろうか?」