第2章 私は彼を知らない
すっとあげはが立ち上がると
近くにいた隠に
自分が手当てをしていた人の
手当てを交代させると
俺の前に歩いてきて
真前に立つと
「少し、屈んで頂けませんか?」
屈んで欲しいと言われ
その通りに上体を下げた
「あ、えっと、すいません。
そうではなくてですね。
膝を落として頂いても?」
膝を落として座ると
ひやりとした感覚が右の額に触れた
どうやら先程の鬼との戦いから
人を庇った際に傷を
負っていたようだった
「少し、深い傷ですね、縫っても?」
その方が早く綺麗に治りますよ
と笑顔で促され
「ここだと、位置的に瞼が
腫れてしまうと思うので、
麻酔なしで、行っちゃっても?」
「ああ、問題ない」
5分もしない内に
さっさと傷を縫合され
綺麗なガーゼを当てられる
「はい、これで、大丈夫ですよ」
「すまないな。助かった」
「どういたしまして」
不死川が彼女を側に置きたい理由は
これかも知れないが
他の負傷者の手当てに
当たっている姿を見ると
随分と手慣れているように見える
「あの…、何か?」
俺の視線を感じたのか
あげはが手当てをしていた
手を止めてこちらを見ていた
「いや、すまない。君は
看護者としても素晴らしいのだな!!」
手際の良さを褒められて
少し照れ臭そうに 俯くと
「元々は、こっちが…
本業だったので…」
そう呟くように言うと
忘れて下さいと付け足した