第2章 私は彼を知らない
「そう言えば、
君の名を聞いていなかったな。
今更かも知れんが、
俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ。君は?」
柱の名前を知らない隊士いないし
どうして 今更に
名前なんか聞いてくるんだろ?
「私は、あげは。
仁科 あげは。元・鏡柱のね」
「そうか、あげは。
君は先刻、本気の相手はいないと
言っていたが。本気じゃない
相手はいるのだろうか?」
先刻 ってすごい
急に話戻して来たな
名前 聞いたのって私の事
名前呼びしたかったからとか?
ずっと “君”だったからな
「本気も何も、恋人はいない
と言いましたよ?」
「不死川と宇髄も、君には不足か?」
2人の名前を出されて
何に不足なのかと
尋ねられているのやら?
「ん?不足って、何にですか?」
「2人とも、十分な男だと。
俺は思っているがな」
まあ 宇髄に関しては
妻が3人もいるのだから
十分だと思うがと付け足した
杏寿郎の問いかけにあげはは
しばらく考え込んで
言葉を選ぶ様にして答えた
「私は、不死川君の優しさに
甘えるつもりも、宇髄さんの懐に
収まるつもりもありません。
どっちにしても、
その募りもありませんので!!」
それでは失礼しますと
踵を返して彼女は
去っていってしまった
彼女には全くそのつもりはないのは
理解できたが
あの2人はそうも 行くまい
2人が彼女を気にかけている事は
俺にも解るし
不死川も宇髄もそばに
置いておきたいとの
心積りの様だった…
まあ かく言う俺も
それに近しい物である事には
違いがないのだが…
数日後ーーー
俺は任務で少し寂れた
港町に来ていた
仕事を終えると
鬼との戦いで負傷者が数名出ていた
怪我をした隊士の手当てに
隠が来ていた
その手当てに当たる隠の中に混じって
手当てに当たっている
彼女の姿があった
声をかけようかと思ったが
彼女は仕事中だし
邪魔をしては悪いと 憚られた
不意に彼女が顔を上げて
はたっと目が合ってしまった
この前の事で
機嫌を損ねているのは事実なので
多少 気まずくもある