第11章 バラと琥珀糖
そして そのあげはの重んじる世界もまた
堪らなく 美しいと……そう感じるのだ
彼女のその 世界もまた
俺にとって 愛おしいと感じてやまない
「あげは」
名前を呼ばれて 頬に手を添えらえる
じっと 愛おしむように見つめられて
「君は、優しい…だが、それだけじゃなくて、
それ以上に……君は、美しいのだな。あげは」
美しいと彼が褒めたそれは……
きっと 私の持つ 信念とかそんな物に
対して言った 美しいで……
そんな所をそんな風に 褒めるのは
きっと後にも先にも この人だけだろう
やっぱり彼の 杏寿郎さんの目には
普通の人が見ないような
見えないような 何かが見えてるのかも?
そう言って 私を見つめる
彼の目は とても優しくて
彼が私に 敬愛の念を抱いてるのだと
感じた……
「今までの俺は、ひとつの絶対的な世界に
……拘り過ぎて居たのかも知れないな」
「杏寿郎さん?」
自分の信じる物を
信じ抜く事に 拘り過ぎて
居たのかも知れないな
俺の信じる物を 信念を貫く
それは昔も今も
これからも 決して変わることは無いが
俺は 彼女が 信じる物を
大切にしたいと 思って
守りたいと感じてるそれを
俺も 守りたいと思っている
「いいんじゃないですかね」
「あげは?」
「拘りが、何もないよりは…
拘る事がある方が、いいと思いますけど?」
「そうか、それも…そうかも知れんな」
程なくして夕食が運ばれて来て
またあの苦い薬湯を飲んで
あげはが入浴をしに行って戻って来ると
しのぶにあげたバラは湯船に浮かんでいたと
興奮気味に話をしてたので
彼女自身にも喜んでもらえたのであれば
それは良かったと思った
髪をきちんと乾かして整えると
それまでさしていたバラは
丈が短くなったので
グラスに挿し替えた様だった
「こうしてたら、まだ持ちそうなので。
明日も使いますね」
「なら、明日も俺が君の髪に飾っても?」
「ええ、勿論。いいですよ」
「あげは」
おいでとあげはに手を伸ばして
腕の中に入るように合図すると
あげはが隣のベットからこちらへ来る
杏寿郎の座っている足の間に座らせると
彼女の背中を自分の胸に預けるように
その肩を掴んで引いて もたれかけさせた