第11章 バラと琥珀糖
「やはり、君を選んで正解だったな…」
「え?正解って?何がですか?」
自分を抱きしめていた杏寿郎の腕に力が
込められたのを感じて
「正直な所、俺の贈ったバラを方々に配られて
複雑な心境だった」
「気を悪くされたのでしたら、すいません…
でも、せっかく頂いたのに無下に枯らして
しまっても勿体ないと思いまして…」
「いや、そうではない。ここに全て飾っても
君と俺しか目にしないだろうし、それだけで
終わるだろう。だが、君がこの屋敷の至る所に
飾った花は、そこを通る誰かを和ませる
だろうし、あの少女達の髪を飾った花も、
あの少女達を笑顔にしていた。
それだけじゃないな…」
「カナヲも…とても喜んでました。普段自分を
飾ったりすることにあまり、興味がないような
子なので、…炭治郎君に褒められてましたし。
杏寿郎さんのお陰ですね」
そう言ってあげはがニッコリと笑った
自分でそうしておいて俺のお陰と言うのか
良く言ったものだな
全く あげはには
敵わないと思わされる事ばかりだな
「俺は、人の老いる事、死ぬ事…
その生きる事の儚さに、美しさを感じていた…、
堪らなく尊くて、愛おしいとすら感じていたが。
君の考えを知るほどに、新しい美しさを
知るようだな……」
杏寿郎の言葉にあげはが
信じられない物でも
見てるかのような目で見ていて
突然何を言い出すんだと思いつつも
「杏寿郎さん…、本当に20歳ですか?」
「俺は、確かに20歳だが?
おかしいとでも言いたいのか?」
杏寿郎さんは随分と達観した
それでいて崇高で
高尚なお考えの持ち主なのだなぁと
感心してしまったあげはであった
私は20歳の頃なんて
そんな事考えもしなかったけどなぁ?
私の考えが 美しい?
随分と哲学的な事を言うな…
今日の杏寿郎さんは
「私の、考え……ですか?」
俺の言葉が唐突過ぎたからか
あげはは困惑しているようだったが
「ああ、そうだ。
君の重んじる世界とも言えるがな」
彼女の話を聞いて 考えを知るほどに
俺とは違う世界を
彼女が感じて生きているのだと知る
「私が、大切にしてる事……ですか?」
「ああ、そうとも言うな!」