第11章 バラと琥珀糖
そのあげはの手首を杏寿郎が掴んで
あげはが摘まんでいる琥珀糖を
自分の口の中に入れると
舌先であげはの指を舐めとる
「甘いな…」
「わ、私は、多分…
しょっぱいと思いますけど…」
こっちを見て笑っている
杏寿郎と目があって
「俺は、今、甘いと思うが…味見してみるか?」
「杏寿郎さんの…、バカっ…」
そう言いつつも
俺からの口付けを受け入れてくれる辺りは
やはり とても可愛いと思う
濃密な口付けを交わして
名残を惜しみつつ唇を離すと
「どうだ?甘かったか…?」と聞かれて
「甘かった…様にありますが、
正直…良くわからなかった様な…」
と言葉を濁したので
「なら、もう一度…すればいいだけだ」
と再び唇を塞がれてしまった
「んっ…、はぁ…んんっ…」
唇の隙間から漏れる
彼女の甘い声が耳をくすぐるのが心地いい
「琥珀糖よりも、
…君の声の方が俺には甘いがな」
そう言っていたずらっぽい笑みを浮かべた
そしてそんな風に笑う彼のその顔が
嫌いじゃないから しょうがないなぁと思った
「また、そうやってすぐ、
恥ずかしげもなく、そんな事言って」
そう言って恥ずかしがって 拗ねた様にして
そしてそんな風に口を尖らせる彼女のその顔が
可愛らしくて もっと見たくなるから
俺はしょうがない男だなぁと思った
「あ、カナヲと約束してましたので、
杏寿郎さんは先に部屋に戻ってて下さいね?」
無論
カナヲの元に向かったあげはが
カナヲよりも3人娘に質問責めにされたのは
言うまでもない話だった
炭治郎が廊下を歩いていると
向こうの方にカナヲの姿を見つけて
「あ、カナヲー!」
手を振りながら カナヲの方へ近づいた
「炭治郎。炭治郎は、これから…自主練?」
「うん、あまり無理しない程度に
しようかなって、あ、カナヲその髪の」
カナヲの髪に真っ赤なバラがさしてあって
「あげは姉さんが、くれたの…
みんなに。お裾分けだって」
そう言って カナヲが嬉しそうに
自分の髪にさしている バラの花を撫でる
そうやって ほほ笑む顔がまた
とても可愛らしくて
「凄く可愛いよ!!カナヲ!
凄い、似合ってるカナヲに!可愛い!」