第11章 バラと琥珀糖
「そうです。そこの居ない何かの声や、
音を認識する事を幻聴と言います。幻聴は、
精神を病んでいる者に現れ易い症状ですが、
幻聴か幻聴じゃないかを
確認する方法を知ってますか?」
幻聴 つまりそこにいない者の
声を聞かない様にする
「耳でも塞ぐのか?」
「ええ、そうです。
…それで聞こえるのは幻聴です。
あげはさんは、看護者です、
当然あげはさんにも、その知識はあるはずです」
だとしたら 耳を塞いでも聞こえる
その声を あげははずっと 幻聴だと
信じ込んでいる 可能性もあるのか……
「だが、彼女の聞いている声は幻聴ではないぞ?
我妻少年も…聞いてるのだからな」
その知らないやつの声を……な
彼女にとっては 知り過ぎた声だが…な
「精神を…心を病んでる者、その声に唆されて
人を殺したり、自分の命をたつ者もいます。
彼が、透真さんが…彼女に何を囁き続けたかは
知りませんが…、かなり厄介ですよ?感覚を
共有できるのであれば、血気止めを使うと
その場でバレてしまいますし…」
「彼女に説明も…できないしな。確かに厄介だ」
「あら?説明なら筆談でいいんじゃないですか?
支配されてるのは、右耳なんでしょう?」
杏寿郎が何も言わずにしのぶを見ていて
そうか 筆談
それなら彼女にも説明する事が出来るな
「胡蝶」
と名前を呼んだかと思うと
「どうしました?煉獄さん」
「その発想は無かったな!
君にはお願いばかりして申し訳ないが、
君ならできると思うのだが…」
「それは、即効性の血気止めでしょうか?
それとも、逆に彼の感覚を欺くための
お薬でしょうか?血気止めは元々ありますが、
後者は難しいかと。あげはさんにも影響が
出てしまうかも知れないので…」
「ああ、でも、煉獄さん。耳だけでなく口も
そこにあるのなら…使えるかも知れませんが
まぁ、そんな簡単な血気術でも
ないかも知れませんね?念押し、しときます?」
そう言って笑うしのぶの笑顔が怖かったのか
言うまでもなかった
「胡蝶、君が味方で良かった」
「随分、含みがありますが?そう言って
頂けて私も光栄ですよー」