第11章 バラと琥珀糖
蝶屋敷へ戻ったのは3時過ぎの事
しのぶの診察を受けて
経過は良好だと言われた
杏寿郎さんは炭治郎君に
個人的に話したい事があると
炭治郎君に面会をしに行ったので
私は自室の整頓でもしようかと
自室へ向かった
「竈門少年!体の調子はどうだ?」
杏寿郎の姿を見て炭治郎が
ベットから体を起こして立ち上がり出迎えた
「煉獄さんっ。はい!俺の方も大分
良くなって来ました!自宅療養されていると
聞いたのですが、今日は定期受診に?」
「ああ、そうだ。少年に
ひとつ、聞きたいことがあってな」
「聞きたい事……ですか?」
「君は、鼻が効くと胡蝶が
言っていたからな、単刀直入に聞く、
あげはから鬼の匂いはするか?」
杏寿郎の質問に
炭治郎は自分のパジャマをギュッと握った
あげはさんから
鬼の匂いがするかと聞かれて
自分の中の記憶を炭治郎が思い返す
「この間の鬼の血気術…、
あの切符の血気術よりも…
ものすごく…かすかにですが、します」
「そうか、……君にはそう感じるのだな」
炭治郎の言葉に杏寿郎は
ある意味確信のような物を持っていたようで
炭治郎の答えは分かっていた様だった
「煉獄さん」
窓際に寄りかかって
炭治郎と杏寿郎の話を聞いていた
善逸が杏寿郎を呼んだ
「どうした?黄色い少年!
黄色い少年も、怪我はもういいのか?」
声を掛けられて杏寿郎が
善逸の方へ体を向ける
「俺は、炭治郎ほど重症じゃなかったからさ、
もう体は平気だけど。あのさぁ、さっき、
炭治郎に聞いた話……右の耳だよ」
「……右の耳?」
この黄色い少年も竈門少年の様な
五感の能力を兼ねているのか?
「俺はさ、生まれつき耳が良くて…さ、
あげはさんの右の耳から…、嫌な音が
するんだ。…普通の人からはしない音」
あげはさんの右耳から聞こえる 嫌な音
それは 紛れもなく 鬼の音で
普通の人からは聞こえない音だったから
「善逸…」
炭治郎が善逸の言葉に不安そうな面持ちで
善逸の名を呼んだ
「本人にさ、聞いた事あるんだよ、俺。
でも、ちょっと聞こえにくいだけって…言われて
それ以上は、聞きにくくてさ…
でも…俺…聞いたんだ」
「黄色い少年、何か知ってるのか?」