第11章 バラと琥珀糖
そんな風に俺を見ていたのか… 心外だな
いや そうでもないか 真実か
彼女にそう思われていても 仕方がないな
「君にそう言う意味で、触れたいと
思っているのは、紛れもない事実なのだが…、
君はどちらかと言えば、そう言う触れ合いは
あまり好まないのではないか?」
「え?そう言うとは、どう言う感じのです?」
居住まいを正して並んで座る形に戻ると
あげはの肩に腕を回して
自分の体にもたれ掛けさせる
あげははどうして俺が
急に止めるつもりになったのかと
困惑して不安そうにしていたが
よしよしとあげはの頭を撫でると
その髪の感触を楽しむように撫でつけた
しばらく頭を撫でていると
あげはが安心した様な表情をして
自分の方へ寄りかかって来た
こういう時のあげはは
とても穏やかで嬉しそうな表情をしている
この顔を見ていれば
それぐらい俺にもわかる
「性的な意味合いのない、触れ合いを好む
と言う意味だが?違ったか?」
「あ、あの…杏寿郎さん、…それは…」
「君は、そもそも相手に気を使い過ぎる
相手が、君を求めてくれば、それに応えて
しまうだろう?何かに付けて、断ったとしても、
心苦しくなるんじゃないのか?」
「俺は、少なくとも、そう感じたが違うか?」
「ご指摘の…通りの部分は、
否定しきれませんが…」
やはりな 俺の推測は間違っていなかった
彼女自身もそれに感づいていて
「なら、聞き方を変えよう。
そう言った行為がないと男女の
関係は維持ができないと思うか?」
素直に答えていいものなのかと
そもそも答えを悩んでいるのか
あげはは口をつぐんでしまった
「あの…、でも…どうして急に…そんな事…」
「俺に、気を遣ってくれてたんだろう?」
彼女が困惑してるのは 当然だ
胡蝶からも禁止されて
止められているにも関わらず
俺が執拗に彼女を求めていると
知らしめるような
行動を何度も取って来たのだから
そして それをしておいて
突然今になって それを止められては
混乱しても 当然の事だろう
それに彼女には あの一件の負い目がある
そう言った類の
触れ合いその物に
嫌悪感を抱いていても
なんら 不思議ではない
彼女は 言葉にはしないが
恐らくは……