第11章 バラと琥珀糖
「あげは…、いいのか?…」
「…んっ…、はぁ…」
いい?いいって何がいいんだっけ?
止めて欲しいって事…?
ぼんやりと熱に侵された頭で考えるも
考えが今ひとつ纏まらないでいると
ツンっと杏寿郎の指が
あげはの唇に当てられて
「いつもより、
…声が…漏れている様にあるが?」
「そ、…それはっ、
杏…寿郎さんっ…のせいです…から」
そうか あくまで自分のせいではないと
言うつもりか…
「そうなってる、君も可愛らしいがな…。
俺としては、もっと…君の可愛い所を
堪能したいが…?」
スルリと腰に腕を回されて
グッと体を引き寄せられると
耳元で囁くように杏寿郎が
「もう、
皆に知れてるんだ…隠す必要もないな」
と確認したのか
独り言なのか分からないように言った
返事を返すべきなのか
返す必要がないか悩んでいると
「?…?…杏寿郎…さん?」
唇ではむように左の首筋に口付けられて
そのまま舌を這わされると
体が思わず跳ねてしまった
「あっ、あっん…!ん、んっ…」
いつも以上に大きな声が漏れてしまって
彼女が自分の握った手を口に当てた
漏れてからでは遅いと思うが
自分でも驚いたのか…不意だったとは言えど
相当に甘い声だったからな 仕方ないが
口を塞いだと言う事は声を堪える
つもりでいるんだろうが…
堪えて押し殺す声と吐息もそれはそれで
趣があっていいがなとは
言ったら怒られるんだろうなと思った後に
「……!?」
不意に違和感を覚えた
ん……?何だ この感じ…は?
聞こえる…?
いや 聞こえているのか?
音……?いや 声…か?
音として認識するのが
難しい程の違和感にも
その感覚は似ている
聞こえている様で
聞こえては…いないのか?
これは……まさか
ふと我に返った
一つ気になる事が出来たと言うか
気になる点を見つけてしまったからだ
「君が、やめて欲しいと言うなら止めるが?
どうして欲しい?止めるか、続けるか…」
その真意を確かめるべく
あげはに確認する
信じられないものを
見る目であげはがこちらを見ていて
「どうして、そんな顔をするんだ?」
「だって、杏寿郎さんの方から
止めるか聞いてくるとか…
何か、違う意図があるんじゃないかと…」